部分痩せとグルカゴンの話:筋トレダイエットの限界


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今回のテーマ


はインスリンの話をしましたので、今回はインスリンと真逆のホルモンであるグルカゴンの話をします。

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インスリンとかグルカゴンというと、なんとなく難しい話の気がするかもしれません。実際詳しい人はここぞとばかりに専門的な知識を披露しますが、結果としてそれが木を見て森を見ずにつながってしまいます。

大事なことは本質を理解することです。グルカゴンを理解する時に、“グルカゴンとは何か?”に深入りするのではなく、あっさりと理解して、体という一つのシステムに視点を移すと、筋トレの限界という面白いことが分かってきます。

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インスリンとグルカゴン


インスリンというのは、炭水化物が分解されて血液中に吸収された血糖を筋肉や脂肪を運ぶホルモンです。

もっとも、これをお医者さんのような専門家に言わせると、血糖値を下げる機能を有するホルモンということになります。血糖値が上昇するとインスリンが出て、血糖を筋肉や脂肪に運ぶことで、血糖値を通常値に戻すのです。

インスリンとは2

そして、血糖値が低下した時に血糖値を上げる機能を有するのがグルカゴンです。

血糖値を上げるということは、血糖を供給することに変わりありませんから、グルカゴンというのは筋肉や脂肪を燃やして血糖を作り出すホルモンということになります。

グルカゴンとは

インスリンは血糖値を下げるホルモンで、グルカゴンは血糖値を上げるホルモンというように真逆の働きをする両者ですが、体にはいつも両者が存在します。

インスリンがあるときはグルカゴンがないといったような、ゼロか百かという世界ではありません。両方ともいつも存在していて、それぞれが増えたり減ったりして血糖値を正常に保っています。

したがって、いつでもグルカゴンが脂肪を燃やしているのですから、前回の記事で話したように、大量のインスリンがグルカゴンの働きを圧倒しないようにインスリンレベルを一定に保つというのは、グルカゴンの働きを生かすという観点からは、脂肪を燃やす上で良い戦略です。

グルカゴンが働く仕組み


ここで、グルカゴンを簡単ながら理解したので、もう少し深入りしてみましょう。

以下はグルカゴンの存在を知らないと考えがちな仕組みです。

脂肪燃焼1

グルカゴンが脂肪を燃やすのに、グルカゴンが登場しないのはいけません。正しいのは以下になります。

脂肪燃焼2

最大のポイントはすい臓がグルカゴンを分泌する点です。当たり前ですが、すい臓はグルカゴンを血液中に放出します。これがどういう意味を持つのでしょうか。


グルカゴンは血液に乗って体中を循環します(図の順番は適当ですから注意ください)。したがって、血糖値の低下(グルカゴン放出のきっかけ)が腹筋運動を原因とするものであっても、グルカゴンがお腹周りに送られるわけではありません。
グルカゴン循環

グルカゴンは血液に乗って循環し、体中の脂肪細胞に送られることになります。では、どこの細胞に吸収されるかというとそれは個人の遺伝的素質によって決まります。

人それぞれ脂肪がつきやすい部位があるはずです。もちろん、お腹周り、太ももの裏、腕の裏等、統計的に見て脂肪がつきやすい部位はありますが、最終的には人それぞれです。

その逆で、脂肪が燃えやすい部位もあるわけです。どんなに腹筋しても燃えやすい部位の脂肪から燃えるわけであって、お腹周りの脂肪が燃えるわけではありません。

筋トレには肩のトレーニング、腕のトレーニングとかいろいろありますが、それを特定部位の脂肪を燃やすために行っているのであればすべて無意味です。

筋トレして放出されたグルカゴンがどこに届くかは遺伝的素質で決まっているからです。

つまり、筋トレで部分痩せはできないのです。理由を一言でいうと、筋トレと脂肪燃焼の間に遠く離れたすい臓が絡むからです。

筋トレダイエットの限界


そういう意味では、世間の認識とは大きく異なり、筋トレというのは非常に内科治療的なところがあります。全体的な脂肪量を減らすには非常に効果的ですが、特定部位への働きかけというのは厳しいものがあります。

だから、脂肪燃焼を目的として筋トレをする人はスクワット、ミリタリープレス、デッドリフト、ベンチプレス、ベントオーバーローイングといった種目で大筋群を鍛えなくてはいけません。

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腕の裏の脂肪が気になるからと言って腕の筋トレばかりするのは非効率です。腕の筋肉は体全体の1割にも満たない小さな筋肉ですから、そこをいくら刺激しても、体への刺激としては非常に小さいことになります。

放出されるグルカゴンの量も少ないですし、それが腕へ届く保証はどこにもありません。全体的な脂肪の燃焼という観点からも、動かす筋肉自体が小さいので消費カロリー自体が小さく、同じ時間歩いている方が効果的という結論になりかねません。

筋トレをするのであれば、体全体の筋肉を刺激して、代謝の活性化に集中する必要があります。体全体の脂肪を少しでも多く燃やすことを目指すのが一番効率的なのです。

しかし、その結果できる上がる体はまさに自分の遺伝的素質そのものになります。

もちろん、筋トレだけでも相当脂肪を落とすことは可能ですし、通常の場合ここで問題は解決します。ただ、アスリートレベルの極限まで体脂肪を減らすといったことをしない限り、自分の弱点部位は結局弱点のままということです。

筋肉を増やすほうであれば、弱点部位の集中筋トレで何とかできるのですが(実はこれも相当厳しい)、弱点部位の集中脂肪燃焼は筋トレではできないのです。

結論


グルカゴンは、インスリンの逆で、脂肪や筋肉を分解して血糖値を上げる働いを有するホルモン。グルカゴンはすい臓から血液に放出されるホルモンであり、それが筋トレしている部位に届くとは限らないので、筋トレによる部分痩せは原理的に厳しい。

参考


グルカゴンの話は、クリス・アセート著のEverything You Need To Know About Fat Loss(日本語版『ダイエットは科学だ!』体育とスポーツ出版)を参考にして書いています。

また、部分痩せについては、筋トレに関する不朽の名著であるArnold Schwarzenegger著のThe New Encyclopedia of Modern Bodybuildingの見解を参考にしました。

なお、大ベストセラー『目で見る筋力トレーニングの解剖学』大修館書店の著者フレデリック・デラヴィエが女性向けに書いたWomen’s Strength Training Anatomy Workoutsでは部分痩せについて、上記とは違う見解を取っているのでいずれ紹介します。

なお、『目で見る筋力トレーニングの解剖学』は原著第1版の訳書なのですが、海外では第3版になっていて第1版より大幅に内容が拡充しているので早く翻訳してほしいですね。面白いところはこのブログでも紹介していきたいと思います。

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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