スクワットの意義とフォームを頭で理解する


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はじめに


今回は、スクワットのフォームを、スクワットの意義から解説したいと思います。

下記関連記事では、バーベルスクワットの基本を解説しているのですが、少しマニアックすぎるという意見を多数受けたので、今回は、自宅でウェイトなしでスクワットする人も対象として、スクワットの超基本を解説します。

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バーベルスクワットのフォームの基本を理解する

スクワットは筋トレ種目としては一番と言っても良いくらいメジャーなものですが、意外に理解されていない種目です。一番メジャーな種目であるがゆえに、ろくでもない情報があふれている種目でもあります。

そこでこの記事では、なぜスクワットがキングオブエクササイズと言われているのかを説明し、そこから、正しいフォームにより何をしたいのかを解説したいと思います。

「スクワットはキングオブエクササイズである。何故なら下半身の大筋群を効果的に刺激できるからだ。」と言ったような大雑把な知識から一歩前に行ってみたいと思います。

途中、バーベルスクワットを前提とするような説明も登場しますが、ウェイトを使わないスクワットとも本質的には同じですし、また、自重スクワットで変な癖をつけてしまうと後の修正が大変になりますので、自宅でスクワットをする人も、自分には関係ないと思わないでください。

もっとも、体の動かし方を変えることによって、使う筋肉が変わるだけで、究極的には”正しいフォーム”なるものは存在しません。ナロースタンスやワイドスタンス、ハーフスクワットやクオータースクワットを中上級者が明確な目的を持って行うことは間違いではありません。工夫して効かせたいところに効かせるのが一番重要です。

なお、下記の説明は、世界的な名著である、Mark RippetoeのStarting Strength 3rd editionとKelly StarrettのBecoming a Supple Leopard 2nd edition を参考にしています(メインはRippetoe)。

何故キングオブエクササイズなのか


まず、なぜスクワットがキングオブエクササイズなのかを説明します。

なお、筋トレトレーナーのレベルを図る方法として、「なぜスクワットがキングオブエクササイズなのか」と尋ねてみるのは、いじわるですが有効だと思います。体に対する理解がもろに出ます。

余談はさておき、スクワットがキングオブエクササイズなのは、それが、Hip Drive(ヒップドライブ)を、直接的かつ効果的にトレーニングできる唯一のエクササイズだからです。

ヒップドライブという言葉を聞いたことはないかもしれませんが、お尻を支点に“くの字”に曲げた体を真っ直ぐに伸ばす動きです。そして、これこそが、人間のパワーの源です。まさにコアストレングスです。

何だかよくわからないと思いますので具体的に説明します。

全身の瞬発力を一番使うスポーツは何でしょうか。なんとなくわかると思いますが、それは陸上短距離、いわゆるダッシュです。そして、その中でもスタートダッシュ、あれほど、全身の筋肉を爆発的に収縮させる動きはありません。

子供時代の徒競走を思い出してください。スタートの時どういう姿勢を取りましたか?

足や手の位置はさておき、前傾姿勢を取ったはずです。さらに、陸上選手になると、地面に手を着いてものすごい前傾姿勢を取ります。

前傾姿勢を取ることが、スタートダッシュに有効なことは誰だって本能的に知っていると思いますが、あれはなぜでしょうか?

あれこそ、ヒップドライブを使うための姿勢です。前傾して、太ももとお腹を近づけ、体を“くの字”に曲げた状態から、体を真っ直ぐに伸ばす動きが爆発的な力を生み出すのです。

試しに、まっすぐ立って、膝も腰もまっすぐのまま、地面を蹴ろうとしてみてください。できないはずです。せいぜい、足首を動かしてぴょこぴょこ動くくらいです。

では、上体を真っ直ぐにしたまま、膝の屈伸だけで飛べるでしょうか?

これも、飛べないわけではないですが、今一つ力が出ない気がすると思います。つまり、スタートダッシュの力は膝の曲げ伸ばしから生まれているわけではありません。

では、膝をまっすくにしたまま、腰を前後に振ってみてください。

膝を少し曲げてバランスを取らないと地面にうまく力は伝えられないと思いますが、お尻を後ろに引いてから、曲げたお尻を伸ばす動きからは大きな力が生み出されるのを感じると思います。

以上を考えてから、その場ジャンプをすれば、少ししゃがんでからジャンプをする時の力の源泉となるのはくの字の曲げた体をまっすに伸ばすお尻周りの動きであり、膝というのは、その力をうまく地面に伝えるバランサーの動きをしていることが分かるはずです。

つまり、力の源泉がヒップドライブで、その力を効果的に伝達するために膝の動きが必要となります。

どんなスポーツも下半身の力が重要と言います。地面を蹴る動きを、野球ならバットに、テニスならラケットに、格闘技なら拳に乗せます。しかし、上体を真っ直ぐにしたまま地面を蹴ることは出来るでしょうか。

出来ないはずです。

下半身の動きを使おうとしたら、必ず、上体をいったん曲げて、それを伸ばす動きが始点になるはずです。どんな競技であれ、力が入りきった瞬間に臀部が屈曲した状態はありませんし、それこそいわゆるへっぴり腰と言われるものです。

そして、力が全開の瞬間で臀部が伸びているということは、その前段階で屈曲しているということです。

ゴルフで、「左足で壁を作ってその壁に腰を全力でぶつけろ」、なんて言われるのも、最初の前傾姿勢から、スイングの最後にヒップドライブを全開にしたいからです。

最近はコアトレーニングという言葉が流行しており、腹筋とその周りを合わせてコアと言ったりしますが、力強い動きのコアは何かといわれれば、それは間違いなく、ヒップドライブをつかさどる筋肉、殿筋、内転筋、ハムストリングスです。実際に体のコア(真ん中)にあります。

手や足だけでは力なんてほとんど生み出せません。体の中心(コア)を曲げて、それを一気に伸ばすヒップドライブこそが、パワーの源泉です。

スクワットがキングオブエクササイズなのは、その動きが、屈曲した体を伸ばすまさにヒップドライブそのものだからです。

どんなスポーツをするにも、決め手となる力強さの源泉であるヒップドライブ。それを直接的に鍛えることで、体全体の力強さを効果的に強化できるから、スクワットはキングオブエクササイズです。

したがって、スクワットというのは単にしゃがんで起き上がるエクササイズではありません。ヒップドライブを最大限に発揮するとともに、その力を効果的に作用点に伝えるための膝の動きをするのが正しいスクワットのフォームなのです。

足幅等のスクワットのフォームは全てそのためにあります。

フルスクワットが基本


以上の説明からわかるように、スクワットの基本はフルスクワットです。

出来る限り体を屈曲させて、一気に伸ばすヒップドライブこそがスクワットの本質だからです。

「深くしゃがめばしゃがむほど脚に効く」なんて言う、あいまいな情報もありますが、そうではありません。体を屈曲してお尻周りの筋肉を伸ばし、体の裏側を収縮させて体の中心(コア)から爆発的な力を生み出すヒップドライブをトレーニングするのが重要なのであり、そのためには深くしゃがむ必要があるのです。

それがスクワットというエクササイズだからです。

情報サイトを見ると、ハーフスクワットやクオータースクワットなど、腰をどこまで落とすかで数種類のスクワットがあるかのような記載がありますが、全部無視してかまいません。

特別な目的をもってではなく、力強い体作りを目的としてスクワットをするのであれば、必ずフルスクワットをしてください。

なお、フルスクワットは太ももの上部が地面と平行よりも下に来るスクワットです。太ももの下部が地面と平行ではフルスクワットではありません。もっと下げる必要があります。

フルスクワット

膝を傷めないために


そうはいっても、フルスクワットは膝を痛めやすいという話は聞いたことがあると思います。

しかし、これもまた大嘘です。フルスクワットこそが安全なスクワットです。以下その理由を説明します。

まず、結論から言うと、ハーフスクワットで無理に重い重量を扱うと、ウェイトを背中が安定的に支えきれなくなって、上体の屈曲が出来なくなり、その反面膝が前に出ます。これが一番膝を痛めます。

下の絵が正しいフルスクワットです。

正しいフルスクワット

ポイントは、ハムストリングスという太ももの裏側にあり、骨盤と膝裏の脛側をつなぐ筋肉の動きです。

立った状態からしゃがむことで、膝が曲がるので、膝の裏側にあるハムストリングスはは収縮します。

しかし、ここで骨盤を前傾すると、骨盤側ではハムストリングスが引っ張られることになります。

等尺性収縮という難しい言葉があるのですが、要するに一方が縮むけど、もう一方が伸ばされるので、スクワットのスタートからボトムの間で、ハムストリングスの長さは変わりません。

この、動作を通じて長さが変わらないというのが非常に重要なのです。

筋肉は収縮するときに力を出します。したがって、縮んだ筋肉というのは力を出せません。

そして、下記の絵を見ていただくとわかるように、膝には、大腿四頭筋という、太ももの表側の筋肉がつながっており、スクワットでボトムから立ち上がるときに、この筋肉が膝(厳密には脛の骨)を前に引っ張ります。

当然、関節には必ず拮抗する動きが用意されていて、それらがうまく働くことでバランスがとられます。

そして、膝を前に引っ張る動きを抑える筋肉はまさにハムストリングスの膝を後ろに引っ張る動きです。

膝の関節


したがって、膝の動きをコントロールするためには、膝を曲げるとともに骨盤を前傾させることで、ハムストリングが収縮できる状態にしておくことが重要です。

骨盤を前傾させないでハムストリングスが収縮した状態では、ハムストリングスが大腿四頭筋に対抗して力を出すことが出来ず、膝のバランスを取ることができません。

ここで、ハーフスクワット等で、無理な重量を扱い、上体を前傾できないような状況でしゃがもうとすると、結局、上体がまっすぐのまま、膝が前に出るような状態になります(そうしないとバランスが崩れる)。

この状態になると、大腿四頭筋の膝を前に引っ張る動きがさらに強まる反面、ボトムでハムストリングスが収縮してしまい、膝のバランスを取ることが出来なくなります。

これこそが、膝を痛める原因です。

間違ったハーフスクワット

ハーフスクワットの動きが膝を痛めるというわけではないのですが、ハーフで無理して高重量を扱うことが、膝を守ろうとするハムストリングスの動きを十分に発揮させないことにつながり、膝を痛めてしまうのです。

重い重量を扱いたいという以外にハーフスクワットをする理由はありませんから(上級者を除く)、ハーフスクワットの方が怪我しやすいというのは現実的には正解だと思います。

結局、正しいフォームでフルスクワットをするのが一番怪我しないのです。

だいぶ、イントロダクション的なところで長くなりましたが、以下で、正しいスクワットのフォームを順番に説明していきます。

スタートポジション


自分のスタジオで女性にスクワットをやってもらうと必ずスタートポジションのスタンスを直すことになります。

つまり、私の経験だけの狭い世界の中においては、独学で自宅等でスクワットをしている女性のスタンスは、全員間違っています。

そんな極論の是非はさておき、スクワットのスタンスは思っているより広いです。

しかも、男女問わず、肩幅で立ってくださいと言った時のばらつきは大きいですから、スクワットのスタンスは肩幅ですという説明はほとんど役に立ちません。

下記の絵が正解です。もっとも、この後に説明するボトムポジションにしたがって多少調整することになると思います。

肩幅
この絵は参考図書の写真を参考に私が書きました。

肩の輪郭の外側の垂直線が、踵の真ん中あたりに来るような足幅です。

そして、一番多い間違いがつま先の向きです。

これは約30度です。45度では広すぎですが、20度では狭すぎます。結構がに股です。

足幅
この絵は参考図書の絵を参考に私が書きました。

スタートポジションはいわゆる仁王立ちに近いものがあります。

ボトムポジション


ボトムポジションは、まず、太ももの上部のラインが地面と平行になるまでしゃがみます。そして、手のひらを合わせて(いわゆる合掌)、肘を膝の少し内側に押し当てます。

そして、足の裏がしっかり地面につく状態(かかと重心やつま先重心ではない状態)で、かつ、両肘が丁度良く両膝の内側に押される状態になっていればOKです。

もう一度、結構がに股になる点を確認してください。

毎回この状態を確認するのは非常に良いルーチンです。

合掌ポーズ

そして、しゃがむときに、膝はつま先と同じ方向に動きます。

膝の動かし方

また、ボトムポジションで膝はつま先と同じかほんの少しだけ前に出る感じです。その分上体は結構前傾します。

膝の位置

スクワットというのは、しゃがむというより、後ろにある見えない小さな椅子に座るような動きです。

動きの基本


スクワットの起き上がるときの動作で気を付けなければいけないことは、スクワットというのはヒップドライブの動きだということです。

したがって、膝を伸ばす、地面を蹴ると言った、脚の筋肉に集中するのは間違っています。

お尻にしっぽがついていて、それを上から引っ張られるような感覚で起き上がります。その動きに集中して、脚は力まずに自然な状態にしておきます。

臀部の上昇

もっとも、お尻を真上に引っ張られると言っても、お尻だけ引っ張られているような動作はバランスを崩しますから要注意です。

腰だけ先行

しっかり、上体全体を起き上がらせるように気を付ける必要があります。特にこれは、自重スクワットで変な癖をつけてしまうとバーベルスクワットに移行したときに直すのが大変ですし、ケガの原因になるので要注意です。

良くある間違い


スクワット良くある間違いをいくつか指摘します。

まず、ヒップドライブという観点から全体像を説明すると、体の裏側を効果的に使うために一番重要なことは、背骨(首から骨盤まで)を曲げるのでもなく反るのでもなく自然な状態にすることです。

ここに変な力がかかっていると、力が出ないばかりか、フォームが崩れて怪我することになります。

つまり、背中が自然なカーブを描かないのが一番多いミスです。

まず、背中を丸めてはいけないというアドバイスを意識しすぎて背中が反っている状態です。

ヒップドライブという基本を知らずに、スクワットを単にしゃがむだけの下半身の運動と捉え、背中を丸めてはいけないというアドバイスだけ気を付けていると、こうなります。

反った背中

これは、膝が前に出やすい、前傾できないと言った欠点があります。さらにヒップドライブのトレーニングと考えると、ヒップドライブの源泉は体の裏側を効果的に使うことですから、背骨は自然なポジションが一番であり、背骨が反って変な力が入っている状態では、体の力を出し切ることはできません。

次は、首と背骨が自然なカーブを描いていない状態です。

首は背骨の延長線上にあるという点をしっかり意識する必要があります。

曲がった首

総合格闘技の試合などで、関節技の取り合いになった時に、相手の顔をポカポカ殴るシーンは見たことがある人も多いかと思います。あれは、顔面パンチという意味もありますが、首の向きを上の絵のように背骨に対して不自然にすると、腕に力が入らなくなって関節が決まりやすくなるのです。

つまり、背中のカーブが不自然だと、体を効果的に使えなくなるのです。

もっとも、上を向いてスクワットを行っている上級者は多く、あくまでRippetoeの見解ととらえてもよいかもしれません。

終わりに


今回はスクワットのフォームについて、スクワットの意義から解説しました。

たかが筋トレの1種目でも、しかるべき書籍に当たると、しかるべき解説・考察が書いてあるものです。

しかるべき人が”正しいフォーム”と主張するには必ず理由があります。しかもそれは積極的な理由です。「こうしてしまうと何々を痛めるから」といった消極的な理由付けも役に立つものですが、どんなフォームでも変なところに力を入れれば怪我はします。

大事なことは、何を鍛えるトレーニングなのかをしっかり頭で理解することです。誰かが教えてくれた正しいフォームを鵜呑みにして、それをやっていれば自然に鍛えられるわけではありません。

自分なりにわかりやすく説明しようとした結果、原著より分かりにくくなっていないことを祈るばかりですが、エクササイズを頭でしっかりと理解することの重要性を少しでも感じ取ってもらえると幸いです。

興味がある人は是非スタジオに遊びに来てください。

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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