筋トレ後の炭水化物補給について:必要性、量、タイミング


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はじめに


今回のテーマは筋トレ後の炭水化物補給です。

筋トレ初心者の中には、プロテインやBCAAを利用していても、カーボパウダーを利用している人は意外に少ないかもしれません。しかし、いたるところで、たんぱく質も大事だけど炭水化物も大事だよと耳にして、結構気になっている人もいるはずです。

また、きっちり食事管理をしながら筋トレダイエットをしている女性でも、ここは盲点になっている人が多いかもしれません。

筋トレ後の炭水化物補給の意味と方法をじっくりと解説してみたいと思います。

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なお、糖質制限ダイエットをしている人には関係のない話です。

筋トレ後の炭水化物

議論のポイント


筋トレ後の炭水化物摂取について、筋肉の成長という観点から考えようとした時に、「トレーニングでエネルギーを使ったのだから補給すべき」というのでは理由になっていません。

また、「エネルギーが不足していたら筋肉は成長しない」というのも感覚的にはわかりますが、あくまで感覚論です。

ポイントは、トレーニング後に筋肉の材料ではなくてエネルギーである炭水化物を補給することがなぜ筋肉成長に有効なのか、という点にあります。

炭水化物と筋肉成長なぜ

補給すると何が起こるのか


トレーニング後に炭水化物を補給すると体に何が起きるのでしょうか。

この点に関して、「トレーニング後に炭水化物を補給すると筋肉成長が加速することが最近の研究で分かっている」と説明されることがありますが、それでは説明になっておらず、1年後くらいには「実はトレーニング後の炭水化物補給は筋肉成長を促進しないことが分かった」という説明にとって代わってそうです。

何事も順番に考えていくのが重要です。

炭水化物を補給するとそれが消化吸収されて血糖値が上がります。そして、血糖値の上昇を受けてインスリンレベルが上昇します。なお、インスリンレベルはプロテインの補給だけでも上昇するのですが、炭水化物を補給した方が、早く上昇し、そのレベルがプロテインのみより長く維持されることが分かっているそうです。

また、トレーニングにより筋グリコーゲンが枯渇していますので、トレーニング直後の炭水化物補給は筋グリコーゲンを早急に補充することを意味します。

つまり、ポイントはインスリンレベルの上昇と筋グリコーゲンの早急な補充が筋肉成長にどういう影響を及ぼすのかという点です。

炭水化物摂取の影響

筋トレ後の体の状況


じっくり考えるために、話を体に移して、トレーニング後の体に何が起きているかを考えてみます。

トレーニング中に筋肉が分解されるというのは良く知られています。もちろんこれは、エネルギー不足が原因であれば、空腹状態でトレーニングしない、トレーニング前にBCAAや炭水化物をとるといった方法で最小限に抑える必要があります。

筋肉を分解して得たエネルギーで筋トレをするというのは本末転倒です。

しかし、実際には、トレーニング中の筋肉の分解は避けられないものであってゼロにすることはできません。そして、トレーニングをやめたらピタッと止まるわけではなく、むしろ加速し、空腹状態でトレーニングすると、この分解はトレーニングから3時間後にピークになるという研究があるそうです。

その一方でトレーニング後には、筋肉の合成が始まります。これは一体どういうことでしょうか。

良く考えてみれば当たり前の話で、筋肉を分解してエネルギーにするプロセスと、疲労損傷した筋肉を回復成長させようとしてたんぱく質の合成が進むプロセスは全く別の仕組みです。分解が止まって合成が始まるといったゼロか百の世界ではなく、同時進行で動いている2つの仕組みです。

つまり、筋肉分解を筋肉合成が上回ればトータルで筋肉は増え、逆であればトータルで筋肉は減ることになります。そういう意味では、トレーニング後の筋肉分解をいかに抑えるのかも筋肉の成長にとって非常に重要な意味を持ちます。

筋トレ後の体の状況

筋肉成長への影響


これでやっと補給の意味を考えることができます。体では筋肉分解と筋肉合成の2つが起きており、また、トレーニング後の炭水化物補給はインスリンレベルの上昇と筋グリコーゲン補充の2つの効果があります。

つまり、4パターン考えてみればよいわけです。

炭水化物と筋肉成長1

(1)筋肉の合成とインスリンレベルの上昇

まず、インスリンレベルと筋肉合成の関係はありません。

確かにインスリンはアミノ酸を筋肉に運ぶホルモンですが、運べば運ぶほど筋肉が増えるという便利な仕組みはありません。筋肉が必要とする以上の部分は脂肪になるだけであり、筋肉が必要とする量はインスリンとは別のところで決まっています。

だからこそ、インスリンレベルを急上昇させると筋肉の一時的な必要量を上回る量を送り込むことになって脂肪が増えるだけだから、中程度のインスリンレベルを保って継続的にたんぱく質を補給するのが良いと言われるわけです。

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インスリンレベルと筋肉合成は無関係とは言い過ぎではないかという声が聞こえそうなので補足します。

まず、アミノ酸を筋肉に運ぶのはインスリンですから、インスリンがなければ筋肉合成は起きません。つまり、インスリンレベルがゼロであれば、筋肉合成は起きませんから、無関係とは言えません。

しかし、インスリンレベルがゼロになることなんてありえないという体の仕組みはさておき、血中にアミノ酸があるのにインスリンがなくて、アミノ酸が体を循環しているだけという状況は起こりません。

たんぱく質(プロテイン)だけ摂取しても、インスリンレベルは上がるのであり、摂取したプロテインは筋肉にちゃんと運ばれます。

もちろん、筋トレ後の筋肉においては栄養吸収ウインドウが開いていますから、炭水化物を摂取し、インスリンレベルを追加的に上げることで、筋肉へのアミノ酸運搬をさらに加速する、筋肉合成を加速させることが出来る可能性がゼロではないでしょう。多少はあるかもしれません。

しかし、プロテインだけでもそれを処理すべくインスリンは出ているのですから、インスリンレベルを上げれば上げるほど筋肉合成が加速するという状況ではないので、「炭水化物を摂取してインスリンを分泌させてアミノ酸を筋肉に運び込もう」というのはミスリーディングではないかと感じている次第です。

(2)筋肉の合成とグリコーゲン補充

これは弱い関係があります。

筋肉質の体というのは燃費の悪い体ですから、体が筋肉を成長させる方向に反応する前提としてエネルギーが充実している状況がなくてはなりません。筋肉を増やそうとしたら多少の脂肪がつくのはあきらめてたくさん食べるのが一番というのは多くの人が聞いたことがあると思います。増量期の考え方です。

これはその通りであり、エネルギーレベルのバロメーターとなるのがまさに筋グリコーゲンの量です。これが低いと体は筋肉成長モードに入りません。エネルギー不足の状態で筋肉質の燃費の悪い体になっても仕方ありませんから、筋グリコーゲンが充実している状況でこそ体は成長に向かいます。

したがって、筋グリコーゲンの充実、すなわち体に十分なエネルギーがある状態は筋肉合成に必要であると言えます。

この観点から考えると、筋肉の合成は48時間~72時間(一般論として)の継続的なプロセスですからトレーニング直後に1分1秒を争って補給する理由はないという結論にもなりかねませんが、先延ばしにする理由はもっとありません。


結論としては、トレーニング後の炭水化物摂取による筋グリコーゲンの補充が筋肉合成を加速すると言えば嘘になりますが、後回しにするよりは直後に摂取した方が良いことになります。

(3)筋肉の分解とインスリンレベルの上昇

これは関係がありますし、これが一番重要です。

血糖値が上昇し、それを受けてインスリンレベルが上昇し、体中の筋肉にインスリンが血糖を届けている状況はエネルギーの補給が充実している状態ですから、これは筋肉分解によるエネルギー補充を阻止するための一番良い方法です。

したがって、インスリンレベルを早急に高めてかつそれを維持するというのは、筋肉の分解を抑えるという方向で、トータルベースの筋肉の成長を促進することになります。

(4)筋肉の分解とグリコーゲン補充

マイケル・マシューズによると筋グリコーゲンのレベルが低いとエクササイズ後の筋肉分解が加速するという研究がありるそうです(論文も引用されている)。

筋肉中のエネルギー源が少ないと、筋肉の分解が進むというのはなんとなく理解できますが、関係ないという論文が将来出てきた時に、それもそうかなと思ってしまいそうな自分はいるのですが(あくまで血糖値と血中アミノ酸濃度が重要だと思うので)、関係ないという可能性はあっても、逆の結果になる可能性はないでしょう。

その論文によれば、筋グリコーゲンが足りなければ足りないほど筋肉の分解が進むそうです。

したがって、この考えを前提にすると、筋グリコーゲンの早急な補充は、筋肉の分解を阻止して筋肉の成長を促進することができます。

(5)まとめ

以上より、トレーニング後の炭水化物補給はトレーニング後の筋肉分解を阻止するという形で、筋肉の成長を後押しします。

プロテイン摂取だけでインスリンは十分出ているであろうと考えると(これもそう言い切れるかどうかは疑問ですが、個人差が大きそうなので別にします)、筋肉合成の直接的な促進という点では、そこまで効果はないのですが、だからと言って後回しにするよりは効果的です。

つまり、筋肉成長のためには、トレーニング直後に炭水化物を摂取するのが有効です。

炭水化物と筋肉成長2

摂取量とタイミング


タイミングについては、上記の効果からすると早い方が良いのでトレーニング後30分以内に吸収の速い炭水化物を摂取することが推奨されます。吸収の速いもので速やかに筋グリコーゲンを補充するとともに、インスリンレベルを上昇させる必要があります。

量については人によって推奨量が異なり、マイケル・マシューズは体重1kgあたり1g、ドリアン・イエーツは体重1kgあたり0.8gを勧めています。

しかし、吸収の速い炭水化物を大量に摂取しても吸収には限度があり、また、吸収の速い炭水化物の大量摂取は、血糖値の急上昇と急降下による低血糖症を招きかねないから、あまりたくさん摂取するべきではないとジム・ストッパーニは説明しており、20~40グラム程度でよく、60gから70gが上限だとしています。

私も、多くて40g位でよいのではないかと思います。ここで多くとるよりも、トレーニング後にはできる限り速やかにバランスのとれた食事をすることの方が重要です。トレーニングのプロテインシェイク等はあくまでつなぎでしかありません。

効果がないという実験


トレーニング後のプロテインシェイクに炭水化物を足したグループと足さなかったグループで筋肉成長を比較し、特段違いは見られなかったという研究がいくつかあるそうです(もちろん差があったという実験もある)。そして、これらの実験は、一部の専門家がトレーニング後のプロテインシェイクに炭水化物を足す必要はないと主張する根拠となっています。

これについてジム・ストッパーニが言及しており、その要旨は「だからどうした?」というものです。

これはジム・ストッパーニの主張する通りで、炭水化物制限ダイエットをしている人からすればこの実験は意味があるのかもしれませんが、炭水化物を摂取している人にとって見れば特に意味のある実験とは思えません。

仮にそうだったとしても、炭水化物を摂取している人において、その一日の摂取量をどのタイミングで摂取するかという問題にしたときに、トレーニング直後の摂取を避けて、その分をそれ以外の食事に移す理由は何もありません。

良くある誤解


時々、トレーニング後の炭水化物摂取による血糖値の上昇は、成長ホルモンやテストステロンのレベルを下げてしまうのではないかと心配する人がいます。

しかし、成長ホルモンやテストステロン(男性ホルモン)とトレーニング後の炭水化物摂取は関係ありません。これらのホルモンはトレーニング中は分泌されますが、トレーニングが終わるとともに分泌は止まり、ホルモンレベルは落ち始めます(60分から90分で正常値に戻る)。

つまり、トレーニングをやめた時点で落ち始めるのであって、そのあとの炭水化物摂取等が影響するものではありません。

まとめ


トレーニング後の炭水化物摂取は、理屈的には、トレーニング後に進行する筋肉分解を抑えることでトータルベースの筋肉成長を促進する。意味がないという研究結果もあり、それは実験結果という現実なのだからそれが真実なのかもしれないが、だからと言って、後回しにする意味はもっとないと考えられる。

なお、サプリで補う場合には、トレ後にはすっきりした味の方が良いのであれば、ファインラボのカーボパウダーにプレーンのプロテインを混ぜるのがお勧めですが、チョコレート味等でも構わないのであれば、ウェイトゲイナーを適量プロテインに混ぜるのが良いかと思います。

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終わりに


今回は炭水化物でした。炭水化物はプロテインと違って筋肉成長との関係が分かりにくいので、少し理屈っぽく考えてみました。

筋肉分解と筋肉合成は体の中で同時に進行していることを考えると、エネルギーが充実してこその筋肉成長であるというシンプルな考えは結果的には本質をついているわけです。したがって、トレーニングで消耗した後はすぐにエネルギーを補給するのが正しいアプローチです。

もっとも、トレーニング後のプロテインシェイクにカーボパウダーを混ぜて炭水化物を摂取するとしても、それはあくまで栄養摂取の補助であって、なるべく早くバランスの取れた食事をとることが何よりも大事です。

参考


下記の書籍を参考にしているというよりべったりです。
Jim Stoppani. Jim Stoppani’s Encyclopedia of Muscle & Strength
Michael Matthews. BIGGER LEANER STRONGER
ドリアン・イエーツ 『ドリアン・イエーツのすべて』

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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