筋持久力に関する質問とその回答


はじめに


今回は、珍しく、このブログの読者からいただいた質問に個別で答えた回答を公開するという記事です。

なんでそんなことしようかと思ったかというと、勢いでワーッと書いた割には結構興味深い回答(他人事のようで恐縮ですが)になったのではないかと思ったからです。

テーマは筋持久力の話で、何を隠そう私自身が、この筋持久力については理解していないと言いますか、今一つしっくり来ていないところなので、ブログの記事にはしていませんでした。おそらく、筋トレ系の話を書いているブロガーの方でも、あまり、触れたくないと思っている方も多いのではないかと勝手に推測します。

特に、ベンチプレスを50RM等で限界までやるようなトレーニングをとり入れているアスリートの情報を知らないので、さすがに偉そうな話を書くのは気が引けるというのが正直なところです。

しかし、以下のような意見は誰もが聞いたことがあると思います。

曰く、「いわゆるバーベルなどを使った瞬発系の筋トレで出来る筋肉は見せかけだけの使えない筋肉。瞬発力など日常生活で不必要で自己満足に過ぎない。自重トレのような低負荷高回数で持久力をつけた方が使える筋肉がつくし、日常生活で役に立つ」

まあ、ここまで、悪意と偏見に満ちた意見を言う人は少ないでしょうし、仮にいたとしても、いろいろ思うところがあるのでしょうから、議論する気はありません。特に、前半はその通りとも言えます。

問題は後半で、低負荷高回数のトレーニングで、日常生活で必要な、いわゆる基礎体力的な意味での持久力が付くと思っているのであれば、それは違うんじゃないのという話です。

参考文献


この本は超良い本で、筋持久力ついて正確に知りたいならこの記事ではなくてこの本読んだほうが良いと思います。

質問の内容


上では、少し極端な見方を紹介しましたが、実際に私に届いた質問は、普通の質問です。

勝手に要約すると、「筋肉を大きくしたいのではなく持久力や体力が欲しい(ダイエットしながら維持したい)。ブログでは速筋を鍛える方法を主に紹介しているが、遅筋を鍛えて持久力や体力を強化する方法があるのか。低負荷高回数で鍛えると持久力が鍛えられるという情報があるが、今一つ理論的に理解できない。」

私の回答


(補足はこの記事で足したものです)

X様

ブログを見ていただきありがとうございます。

少し難しいテーマですが、頑張って回答してみます。

おそらくポイントは筋持久力の意味するところです。そして、これが実は厄介なので、私のサイトを含めなかなかうまく解説している情報サイトがなかったりします。

筋持久力といっても実質的に複数の意味があるのが最大のポイントです。

1.まず、空気椅子のように、同じ姿勢が何分できるか。
2.同じ力の瞬発的な動作を何回出来るか(例えば同じ強さの[補足:厳密には1RMに対する同じ割合の]パンチを何回打てるか等)。

いずれも筋持久力と言われるものです。

2に関して、腕立て伏せは負荷が軽いから筋力はつかず筋持久力しかつかないなんて言われたりしますが、厳密には、最初のうちは筋力もつきます。そして、筋力が付くということは、体重を同じとすると一回当たりの体への負荷は小さくなりますから、できる回数が増えるのは当然であって、持久力が増えているわけではないことになります。もちろん、持久力も増えているから話はややこしいです。

話を元に戻します。

空気椅子が10分出来る人が11分出来るようになるためには、11分に向けて、自分の限界まで追い込むトレーニングをすると、いつか11分出来るようになります。つまり、筋持久力が増えました。

ボクサーが、サンドバックを全力で打つトレーニングを続けると、スタミナとは別に(心肺の限界とは別に)、打てば打つほど、パンチ力は落ちていくはずなのですが、その落ち度合いが鈍くなります。これも、筋持久力は増えたことになります。

ラグビーのスクラムは全身の全力を出しますから、回数を重ねるごとに力は落ちていきますが、何回もスクラムの練習をすると、やはり、出せるパワーの低下の度合いは減っていきます。これも筋持久力が増えたことになります。

つまり、結局トレーニングとは、体を追い込むと、体が適応してできるようになるというだけのものです。

酸素をエネルギーとして使えず、エネルギー効率の悪い速筋まで稼働しないと持てないウェイトを使うと、体としては速筋が足りないと感じ、速筋の成長(ちょっと怪しい言葉遣いですが)、いわゆる筋肥大が起きます。

それとは別に、速筋がまったく使われないわけではないですが、低負荷高回数、例えば30kgのベンチプレスで20回が限界の人が、頑張って20回やっていると、21回位できるようになる日が来ますし、10kgで50回が限界の人が、50回でトレーニングすると、51回できるようになる日が来ます。これが、低負荷高回数だと筋持久力が付くという話です。

[補足:この例だと筋力自体が増えている可能性は否定できないので、1RMの20%で限界までやっていれば、20%1RMの挙上回数が増えると説明した方が適切なのですが、実際には定期的に1RMを計っている人などあまりいませんから、上記のような説明・理解になりがちで、それこそが混乱の原因なのですが、現実的にはこの程度の理解で良いのではないかなと思っています。よくないのかな。 ]

それの延長で、1時間を全力で走り続けると、4kmしか走れない人も、毎回1時間全力で走っていれば5km走れるようになってきます。ただし、ここまでくると、筋肉に対する負荷が弱いので、筋持久力ではなく、心肺機能の問題となり、体のことを考えると、心肺機能が高まったことになります。もちろん、筋肉の中のミトコンドリアが増える等?(ちょっとここ自信がない)酸素利用効率が高まったり、遅筋の中に変化は起きてはいるのでしょうが、速筋のように筋肥大するわけではないので、筋肉にフォーカスせずに、心肺能力が高まったなんて言われるわけです。

ここでやっと回答に入れます。

結論としては、つけたい体力・持久力の定義をはっきりさせるべきです。

何かスポーツをやっていて、パンチ・キック・スイング等を繰り返しているうちに、後半になると力が出せなくなってくるという意味での、体力・持久力をつけたいのであれば、その競技なりの負荷(ラグビーのスクラムであればかなり高負荷ですし、ボクシングのパンチであれば相対的に低負荷)で、高回数(筋肥大目的の8回等でなく競技に応じた回数)トレーニングするのは意味があります。

[補足:ただ、バーベルやダンベルを使う合理性は少ないと思います。 ]

しかし、体力・持久力が、いわゆる日常生活で疲れにくい体という意味での体力・持久力であれば、筋トレが無意味とは言いませんが(引っ越し屋さん等筋力が必要な生活を送っているのであれば、筋トレしなくても全力で引っ越しをしていれば必要な筋持久力はついてくるはず)、理論的にどの程度の負荷で何回やればよいという解答は出せないのというのが答えで、むしろ、有酸素運動で心肺能力を高めた方が良いということになるかと思います。

以上、だいぶ長くなりましたが、回答です。

筋持久力の話は、私もまだ整理できていない部分があるので、直感的な部分もありますが、そこはご容赦ください。

お役に立てば幸いです。

Lifting Mode

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補足


実はメールを送る前に筋持久力の定義というか説明があいまいというか不正確かなと思い、何回も直そうとしました。

また、参考文献を何回も読み直しました。

ただ、ここを厳密に定義しようとすると、話がわけわからなくなるというかポイントがズレるような気がして、そのままにしました(回答の最初に、そこがポイントなどと大上段に構えたのですが・・・)。本当のポイントは筋持久力の意味ではなく、低負荷高回数のトレーニングの効果だと思うからです。

それに、筋持久力の定義というのは、具体的に困っている人の側から定義しないと、どうも良く分からないのです。

例えば、ボクサーを例にすると、試合後半になっても左ジャブのスピードが落ちてこないようにしたい場合と、試合後半になっても、フルパワーでの右ストレートのパンチ力が落ちてこないようにしたい場合で、感覚的には全然違う能力のような気がしますが。問題になっているのは共に筋持久力です。

さらに、上の例だと、たぶんやるべきトレーニングは違うはずで、もしあるボクサーが「共に筋持久力の問題であり、すなわち、パンチを相手にクリーンヒットさせるのが非常に大変で、それまでに何十分とガードしながら打ち合い続けるボクシングにとっては筋力より筋持久力の方が重要だから、自分は50RMでベンチプレスをしている」と言っていたら少し違和感を覚えます。

ボクシングやキックボクシングのジムに行ったことある人はわかると思いますが、プロ選手の人たちのミット打ちやサンドバッグ打ちは見てて圧倒されるのですが、とにかく動き続けていろんなパンチを打ち続けるトレーニングをしているかと思いきや、それが終わると、フルパワーで打ちまくるトレーニングを始めて、しかもそれを延々と続けたりして、いずれもよくあれだけ打ち続けられるなとレベルの高さに唖然とするのですが、両方とも、筋肉的には、筋力か筋肥大か筋持久力かと言えば、筋持久力のトレーニングです。そして、何より、ボクシングのためにはその両方を行うことが正しいトレーニングなのだと思います。筋持久力強化と言っても50RMのベンチプレスの第一次的な効果は、その重量で51回できるようになるという効果にすぎないからです(メイウェザーやパッキャオがやっていないのを祈るばかりですが)。

サンドバック打ちやミット打ちでへとへとになった体で最後に腕立て伏せ等を筋力強化の補強として行うのは意味があるとは思いますが、別途筋肥大含めた筋力向上のためのウェイトトレーニングをしているのであれば不要かと思います(根性を鍛えるという意味では否定はしませんし、重要だと思います。)。そして、それが筋持久力目的の補強であれば、ミット打ちやサンドバッグ打ちを1ラウンド増やしたほうが効果的なのではないかと思う次第です。

結局、筋トレでは力強い体作りに専念し、スポーツパフォーマンス的な部分については、その競技の歴史の中で洗練されてきたトレーニングをするのが一番良いのではないかという、他の記事でも書いてきた結論に行きついてしまいます。

別の見方をすると、筋持久力を、1RMに対する同じ割合で何回動作できるかという指標だとすると、20%の筋持久力を鍛えると、50%の筋持久力も上昇するような普遍的な筋持久力が定義できるのかという疑問です。もし、そうだとすると、筋持久力を鍛えると、1RMだと1回、その70%くらいだと10回、50%だと20回みたいなグラフを見たことある人は多いと思いますが、そのグラフ自体が底上げされる結果となり、結局、筋力と筋持久力の何が違うのかわからなくなります。

脱線しますが、そう考えると最大筋力という概念自体はわかりやすいものですが、その限界も見えてきます。

つまり、エンジンに例えると、極端な例ですが、最大出力300馬力でも1万回転まで回して300馬力出るエンジンと、最大出力200馬力でも3000回転くらいで200馬力に到達するエンジンのどちらが優れているかは、走るコースの形状や、走るのがサーキットか一般道か悪路かで大きく異なります。

実際、モータースポーツでは、サーキットの特性から求められる最適なエンジン性能を導き出し、エンジニアがレースごとにエンジンの性能曲線を微調整するわけです。最大出力が大きいことは間違いなく良い事ですが、車好きバイク好きの人で、最大出力だけ見てエンジン性能を比較する人はいないでしょう。自分の用途とエンジンのパワーカーブ(性能曲線)を比較して決めるはずです。

これは筋肉にも言えることで、測定が一般的ではないから行われていないだけで、近い将来、車のエンジン性能のような、体の性能曲線が定義されるようになり、スポーツ選手は皆、自分の体の性能曲線を測定し、各競技で求められる最適性能曲線の形状を理論的に分析し、自分の性能曲線をそれに近づけるトレーニングをするようになるのだと思います。

そして、筋トレも、筋力か筋肥大か筋持久力かなんていう直観的な3区分ではなく、どういうトレーニングが、性能曲線の形状をどのように変化させるのかという観点から整理されていくのでしょう。それとともに、筋トレと持久力トレーニングの配分も科学的になっていくのだと思います。

だいぶ脱線しましたが、ここら辺は参考文献をかなり参考にしています。興味ある人には間違いなく面白い本だと思います。

そして、やっと最初のテーマに戻りますが、日常生活で生きる筋持久力トレーニングというのは考えにくいと思います。

もし、日常生活の中で、夜になると歩けなくなって、会社からタクシーで帰宅しているとか、夕方以降は大胸筋や三角筋が痙攣して、肘を脇腹に付けてないと、なにも持てないとかであれば、筋持久力の問題は生じていますが、それであったとしても、できる限り家の途中まで歩いてみる等、必要な日常生活を限界までこなすことが一番のトレーニングであり、バーベルをもって、30RMでトレーニングすることで、日常生活の悩みが解決したり、いわゆる疲れにくい体になったりするわけではないと思います。

日常生活に役に立つという観点で話をすれば、瞬発力を鍛えるのと同じくらい、筋持久力を鍛えるトレーニングは意味がないと思います。

終わりに


久しぶりの更新の割には、なんだかよく分からない記事になってしまいましたが、伝えたいことは伝わるのではないかと思います。

使える筋肉とか使えない筋肉という話はさておき、“要するに”でぶった切れば、10RMを10回挙げるトレーニングの効果は11回挙げられるようになることでしかなく、30RMを30回挙げるトレーニングの効果は31回挙げられるようになることでしかありません。

10RMのベンチプレスでつく筋肉は、10RMでのベンチプレスに役に立つ筋肉であり、それを“使えない筋肉”と指摘することはできますが、腕立て伏せを50回やったところで、同じように腕立て伏せを51回やるために役立つ筋肉が付くだけで、それが“使える筋肉”となるのは、日常生活で51回目の腕立て伏せが出来なくて困っている人だけです。

ロジカルシンキング大好きな弁護士よろしく三段論法で、「低負荷高回数トレーニングは持久力を向上させる効果があるところ、持久力の向上は日常生活に役に立つものであるから、よって低負荷高回数トレーニングは日常生活に役に立つ」という主張を聞いたら、「異議あり、持久力概念の曖昧さを奇貨とした詭弁の類である」と反論しなくてはいけません。

そういえば、マイク・タイソンは現役時代にディップスを毎日数百回やっていたことを思い出しましたが、思い出さなかったことにしたいと思います。天才系のトップアスリートが出てくるとまとめようがなくなるので。

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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