BCAAについて:効果、摂取方法そして不要論


スポンサーリンク

はじめに


今回のテーマはBCAAです。

BCAAはスポーツサプリの中でもかなりポピュラーなので知っている人は多いかと思います。また、良く知らない人でも、ジムで真っ赤だったり、真っ青だったりする鮮やかな色の怪しい飲み物を飲んでいる人は見たことがあると思います。あれは海外製BCAAサプリです。

筋トレしている人の中には、欠かさずに摂取している人も多いと思いますが、値段が高いので摂取していない人も結構多いかと思います。また、筋トレ初心者が摂取しようかどうか一番迷うサプリかもしれません。

しかし、ポピュラーなサプリにありがちですが、その理屈の部分はいま一つ理解されていないところもあるので、その効果等を解説してみます。

なお、記事の最後に参考文献をのせていますが、主にアメリカで人気のジム・ストッパーニ、マイケル・マシューズ及びクリス・アセートの書籍を参考にしています。

アミノ酸とたんぱく質


まず、BCAAに関する議論をする上で、たんぱく質(プロテイン)とアミノ酸の関係を理解していることは必須です。そこが良く分かっていない人は下記関連記事にまとめてあるので参照してください。

関連記事

プロテインをゼロから理解する:ダイエット&筋トレの超基本

BCAAとは何か


BCAAとはBranched Chain Amino Acids(分岐鎖アミノ酸)の略で、要するに化学構造がアルファベットのIのような直線状ではなく、Yのような枝分かれした形をしている3つのアミノ酸を言います。

具体的にはロイシン、イソロイシン、バリンの3つのことを言います。

BCAAという名前の商品でも、各メーカーごとに入っている3つの比率は違うのですが、2対1対1(ロイシンが2)が多い気がします。この比率について自分なりに考えられるようになれば、この記事を読んで意味があったことになると思います。

BCAAの効果


1.代替燃料

筋トレ中のエネルギーは血中および筋グリコーゲン中のグルコース(糖)です。しかし、それらが足りなくなるとBCAAが燃料として使われることになります。

もっとも、ブドウ糖が主燃料であり、BCAAが副燃料というのはその通りなのですが、グリコーゲンがゼロになったからBCAAが燃料として使用され始めるといったゼロか百の世界ではありません。程度の違いはあれど常に両方とも燃料として使用されており、BCAAの燃料利用がハードな運動中は高まるというのが本当のところです。

そして、BCAAはグリコーゲンのように体のどこかに蓄えられているということはありません。そこで、BCAAはアミノ酸ですから、体は筋肉を分解してBCAAを体に補給することになります。したがって、エクササイズ前にBCAAを補給しておくと、筋肉の分解を最小限に抑えることができます。

筋肉を分解して筋トレのエネルギーにするというのは、本末転倒ですから、この観点からは、筋トレ前のBCAAの補給は必須ということになります。

また、代替燃料たるBCAAをトレーニング前に摂取して血中を巡回させておくと、充実したトレーニングが可能になるという利点もあります。

2.疲労軽減

これはバリンの効果です。

エクササイズ中にはトリプトファンというアミノ酸が脳に送られセロトニンという鎮静作用を持つ物質に変えられます。これが、疲労感の原因となります。しかし、バリンはトリプトファンが脳に送られるのを邪魔するので、疲労感の軽減に役立ち、集中してエクササイズすることができるようになるというものです。

3.筋肉合成の活性化

これはロイシンの効果です。

ロイシンは筋肉合成のカギとなる物質の一つです。筋肉中のタンパク質合成のスイッチをオンにする物質であり、正確にいうとmTORという細胞成長を主導する酵素を刺激する物質です。したがって、筋肉成長を促進する効果があることが分かっています。

BCAAの摂取方法


代替燃料と疲労軽減という観点からは、エクササイズ中にBCAAが血中を回っている必要がありますから、エクササイズ開始直前の摂取が良いということになります。

そして、筋肉合成の活性化という観点からすると、筋肉が回復成長するのは筋トレ後ですから、BCAAはエクササイズ後に摂取するのが良いのということになります。

サプリメントメーカーの多くは、BCAAをトレーニング直前直後に5グラムから10グラム摂取しましょうと勧めています。ジムストッパーニも全く同様に5~10グラムをトレーニング直前直後に摂取すべきと説明しています。

しかし、摂取タイミングは良いとしても、上記の効果だけでは“どのくらい取ればよいのか”は一切わかりません。そして、実はこの疑問こそがBCAA不要論につながります。

最大の論争点


たんぱく質はアミノ酸からできており当然BCAAも含まれます。実際ホエイプロテインの15%位はBCAAですから、たんぱく質を十分に摂取していれば絶対量としてBCAAは足りることになります。BCAAに関する最大の論争点は、結局のところなぜフリーフォーム(つながったたんぱく質としてではなくバラバラにされた状態のこと)のアミノ酸を追加で摂取する必要があるのかという点につきます。

フリーフォームのアミノ酸を摂取するメリットは吸収の速さだけですから、アミノ酸の形でBCAAを摂取して1分1秒でも早く体内に摂取する必要があるのかどうかがポイントです。

まず、ロイシンの筋肉合成作用に着目すると、ほとんどの人がトレーニング後にプロテインシェイクを飲んでいると思います。そして、筋トレ後の30分間だけで筋肉の回復や合成が起こるわけではなく48時間から72時間継続するプロセスであること、プロテイン特にWPI(ホエイプロテインアイソレート)を取れば吸収はかなり早いことは知っているはずです。

とすると、なぜそのタイミングでBCAA(とくに筋肉合成に関係のないバリンとイソロイシンを含めて)を5~10gも取らなくてはいけないのかという疑問がまず生じます。

続いて、トレーニング前の摂取についてもトレーニングの1から2時間くらい前に食事をしたりプロテインを飲んでいれば血中アミノ酸レベルは十分に高いのではないかという疑問があります。

BCAA不要論者は、筋肉合成にBCAAが不要だと言っているわけではありません。

彼らは、筋肉合成プロセスは継続的なプロセスであるから、筋肉合成のためには、こまめに高タンパク質の食事をとって血中アミノ酸レベルを高く保ち続けるのが最重要であると考えています。そして、血中アミノ酸レベルを高く維持した状態でトレーニングに臨めばトレーニング前のBCAA摂取は不要であり、筋トレはそれほど長期間行うわけではありませんから、アミノ酸レベルをある程度保ったままトレーニングは終わる。さらに、トレーニング後にはそのまま筋肉合成が始まり、トレーニング直後に追加でプロテインシェイクを飲めば十分である。たんぱく質を継続的に補給していれば、そのうちの15%位は当然BCAAであるのだから、あえてサプリでBCAAを取る必要はないと考えています。

マイケル・マシューズの主張


BCAA不要論者であるマイケル・マシューズは上記のポイントを補足するために以下のことを主張しています。上述したようにそのポイントはあくまで“たんぱく質を継続的に補給することが大事なのであって、それをしているのであればあえてフリーフォームのBCAAサプリを摂取する必要はない”というものです。

1.食事やプロテインパウダーからの摂取よりもBCAAサプリからの摂取の方が効果的という研究結果はない。むしろ逆に、アミノ酸飲料摂取よりもたんぱく質摂取の方が効果的という研究ならある。

2.サプリの宣伝でよく使われているBCAAの効果を証明したとされる研究では、被験者たちは体重の2から3倍の必要たんぱく質量を摂取していない(BCAAの宣伝良く登場する、レスラーを対象にした一番有名なフランスの論文は、88kgのレスラーが80gしかたんぱく質を摂取していない状況で52gのBCAAが足された実験)。つまり、筋トレをしている人の通常のタンパク質摂取量(体重の2倍)に加えてBCAAを足した実験ではない。これらの実験から言えることは、たんぱく質を体重の1倍程度しか取っていない人はBCAAを摂取することで筋肉合成に良い影響があるという全然目新しくない事実である。

3.実は、体重の2倍以上のたんぱく質量を摂取しているウェイトリフターを対象としてBCAAが摂取された実験が2つある。

しかし、それらは、Scivation(Xtendという有名なBCAAサプリを作っているメーカー)に資金提供を受けてなされ、論文誌に投稿されていない実験と、ジム・ストッパーニによりなされた劇的な効果を示した実験(論文誌に掲載されている)である。

ジム・ストッパーニに主導された実験は最低でも2年以上継続しているウェイトリフターで体重の2.2倍から2.4倍のたんぱく質を摂取している被験者を対象としてBCAA(使用されたのはXtend)をトレーニング中に摂取させたところ、8週間で4kg筋肉量が増え、カロリー余剰にもかかわらず2%体脂肪(率ではない)が減少したというBCAA(正確にはXtend)の劇的な効果を実証した実験。

マイケル・マシューズはこの実験に対する直接のコメントは避けていいますが、Alan Aragonという著名研究者のこの実験に対する下記のコメントを紹介して終わりにしています。

“The skeptic in me is tempted to chalk up some of the results to not just funding source (Scivation) but also the longstanding friendship between Jim Stoppani and the Scivation staff. The fact is, there is no way to quantify the degree of commercial bias inherent in this trial or any other for that matter.”

(個人的訳)
疑念はスポンサーに対してだけではなく、そのスタッフとジム・ストッパーニとの長い間の友好関係にもある。いずれにせよ、この実験にどの程度のビジネス的な影響が及ぼされたのかを見積もることはできない。

以上のような主張に基づいて、マイケル・マシューズはたんぱく質の継続的な摂取をしていればBCAAサプリの摂取は不要であると結論付けています。BCAAがいらないと言っているのではなく、トレーニングの1~2時間前にしっかりとたんぱく質を取ることが一番効果的であり、それをやっていればBCAAは不要であるという意見です。もっとも、ホエイプロテインを選ぶときはロイシンが豊富なものを選ぶべきという面白い選び方を勧めています。


また、ジムに行く時間の都合上、空腹状態や食事から間隔のあいた状態でトレーニングせざるを得ない状況であればトレーニング前にBCAAは摂取すべきとしています。

まとめ


以上をまとめると、BCAAというアミノ酸に効果があるのは確かです。しかし、たんぱく質を十分に摂取していればBCAAは間に合っているはずというのもその通りだと思います。

そして、トレーニング直前とトレーニング直後に、吸収の速いBCAAを摂取する意味があるのか否かは議論のあるところですが、たんぱく質をしっかり摂取していれば、大量に摂取する必要はないというのは間違いなさそうです。どう考えても10gは取りすぎではないかと思います。特に、効果を示した実験というのも、被験者がそもそも十分なたんぱく質を摂取していないのであれば、アミノ酸摂取に効果があるのは当然であり、また、実験がサプリメーカーに主導されているのであれば、怪しいのも確かです。

しかし、トレーニング直前と直後の摂取が無意味なのかと言われるとかなり微妙な気がします。意外にアミノバイタルはいい線行ってるのかもしれません。トレーニング後はプロテインシェイクを飲むので関係ないとしても、トレーニング前に1g位摂るのはちょうどよい結論かもしれません。

さらに、エクステンドのような、トレーニング中のBCAA摂取も、無意味だと完全に否定できるものではありません。実際に上級者の多くはトレーニング中BCAA摂取していますし、トレーニング中の筋肉がパンパンの状態というのは、血流が活性化している、つまり、筋肉に栄養が大量に送り込まれている状況ですから、そのタイミングで吸収の良いアミノ酸を摂取するのが良いに決まっていると言われればその通りで、反論は難しいものがります。

BCAAは高いと言えども一回当たり100円程度ですから、ジムで何となくクリスタルガイザーを買うよりは、BCAAサプリを水道水で割ったものを飲んだほうが筋トレには効果的かもしれません。

コストパフォーマンス的にこれ以上のものはないのでは。

1回1gで十分と言う人にはこれが便利で、そんなに高くもない。

完璧を期したい人はエクステンド。

色々探したい人はiHerb

終わりに


日本にはたんぱく質とアミノ酸の関係を良くわかっていない人が多く、さらに根拠不明なプロテイン拒否反応を持っている人も多いですから、サプリメーカーにとってアミノ酸は主戦場と化しており、言いたい放題の宣伝合戦となっています。

クリス・アセートはBCAAの有効性を説明しながらも、1日5回から6回の十分なたんぱく質補給をしていないのであればアミノ酸の摂取は何の結果にもつながらないと言っています。これが一番有効なアドバイスかもしれません。

参考


Jim Stoppani. Jim Stoppani’s Encyclopedia of Muscle & Strength

Michael Matthews. BIGGER LEANER STRONGER

Chris Aceto. Championship Bodybuilding

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
image31


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

TOPへ