バーベルスクワットのフォームの基本を理解する


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はじめに


今回のテーマはバーベルスクワットのフォームです。特に正しいフォームの前提となる考え方を説明します。

最近はライザップなどのダイエットジムや筋トレ好き芸能人の影響もあり、少しだけ筋トレが人気なので、筋トレに関する情報をよく見ます。

その中でも、スクワットはキングオブエクササイズとして紹介されることも多いです。また、ケガをしやすいエクササイズであるというのもよく知られており、正しいフォームが重要ですと強調されることも多いです。それはその通りだと思います。

しかし、目線、足幅、つま先の向き、手幅等、細かく説明しているものは多いのですが、どうも暗記型というか、“正しいフォームの構成要素”なるものを羅列しているだけで、根本的な説明しているものは少ないと思います。

そこで、スクワットやデッドリフトに関しては世界的権威のMark Rippetoeの著作に準拠して、スクワットの基本を説明したいと思います。

なお、以下はバーベルスクワットを前提にしています。

(追記)
スクワットとは一体どういうエクササイズなのかやフォームの注意点については下記関連記事にまとめたのでそちらもご参照ください。

関連記事

スクワットの意義とフォームを頭で理解する

スクワット見本2

重力が及ぼす3つの力


筋トレにおいて、私たちはバーベルやダンベルといった重いものを持ち上げます。それらに重量を発生させているのはもちろん地球の重力です。重力は地面に向かう垂直方向の力ですから、持ちあげたバーベルやダンベルも下に落ちようとします。横に動いたりはしません。

その垂直方向に働く重力は結果として3種類の力となって私たちの体に影響します。圧力、張力、そして今回の主題のモーメントです。下の絵を見ていただければなんとなくは理解できると思います。物理の講義ではありませんから、なんとなくで良いです。

3つの力

圧力は基本的に骨が対応します。そして、張力には主に筋肉が対応します。そして、モーメントには骨と筋肉が連動して対応します。

このモーメントという力は、”支点を回転させようとする回転力”といったあいまいな理解でかまいません。力点の重量が、腕などの堅い棒を伝わって支点に回転させるような形で伝わるのがモーメントです。そして、スクワットやデッドリフトのような多関節種目では、その動きの中で発生するモーメント、つまり、バーベルの重量が骨によって関節に伝えられる力を理解することが重要です。

モーメントアーム


圧力や張力がかかっている時に、その力を計算するのは簡単です。垂直方向の力ですから、重さが全てです。しかし、モーメントは違います。下の絵を見てください。

モーメントアーム2

関節から遠くなればなるほどきつくなるのは容易に想像つくと思います(上の例だと実は手首があるのでそこがきつそうですが、一本の棒だとして考えてください)。結論としては、モーメントの大きさというのは、もちろん重量自身もありますが、支点からの距離によって決まります。この距離をモーメントアームといいます。

下記の絵を見てください。

レンチ

レンチでボルトを回す時のモーメントです。矢印の長さがボルトにかかる力の大きさを表します。②より①の方が、モーメントアームが長いので、その分だけ同じ力でレンチを引いたとしても強い力がボルトに伝わります。

なにもレンチの向きによって、ボルトにかかる力が変わるわけではありません。②の問題点はレンチに対して垂直に引いていないことです。②ではなく③のようにレンチに垂直に引くべきであることは、誰でも経験上知っていることかと思います。

では、同じ力でレンチを引いたのに、①や③と比べて②では、ボルトに伝わる力が弱いとしたらその差はどこに行ったのでしょうか。正解はレンチ自身に向かっています。ボルトを回そうとして使った力の一部はレンチ自身をボルトに押し付けるような力となってボルトに跳ね返されています。

もっとも、重力は垂直方向にしか働きませんから、これを人間の体で考える場合には、③のようなことは起こらず、①や②のようにバーベルと支点の水平方向の距離だけ考えればよいことになります。

つまり、水平方向の距離(モーメントアーム)がそのままモーメントの大きさになります。

さて、やっとスクワットの話に入れます。


バーベルスクワットのモーメント


スクワットのモーメント

これが、スクワットのボトム(少し浅いですが)で股関節と膝にかかるモーメントです。水平方向の距離(矢印の長さ)がモーメント(関節をたたもうとする力)の大きさを表します。膝にかかるモーメントはややこしそうですが、結論として単に水平方向の距離を考えればよいです。

この絵が分かるとhigh barとlow barの違い(どこでバーベルを担ぐかの影響)や、体の前傾、膝をどこまで前に出すか、等がどう体に影響するかが分かるようになると思います。

もっとも、そこは応用論点なのでこの記事では深入りしません。初心者にとって一番大事なのは、下記の絵のフォームの問題点が分かるかどうかです。

何がいけないのか

太ももが地面と平行でないから浅い、前傾しすぎ、下を向きすぎ、膝が前に出すぎなどと思った人はスクワットフォームの理解が甘いです。

上のフォームの最大の問題点、それは、足の裏の真ん中にモーメントが発生している点です(足首だと思うかも知れませんがが、足首はふくらはぎによりしっかり固定されているため、実際には足の裏の真ん中にモーメントがかかります。バランスを崩せば、足首に負荷がかかるというより、おっとっととなるはずです)。下記の絵を見てください。

不要なモーメント

足の裏の真ん中にかかるモーメントはスクワットというエクササイズに一切不要な力です。絵の右の、バーベルを斜めに持っている状態と同じで、いわゆるバランスの取れていない状態であり、力の一部がバランスを取るために割かれている状態です。

スクワットをする時に気を付けなくてはいけないことは、この無駄なモーメントが発生しないようにすることであり、足の裏の真ん中の垂直線上をバーベルが上下することです。そうでなければ、キングオブエクササイズといって多大な労力を使いながら、その一部はバーベルを持ち上げるのではなくバランスを取ることに使われていることになります。

したがって、しゃがんでから持ち上げるときも、確かに股関節に力を入れて持ち上げるのですが、不要なモーメントが発生しないように股関節だけではなく背中にも力を入れて挙上する必要があります。背筋がきつくなってきて腰だけ持ち上げるとバランスを崩してもっときつくなり、ますまる怪我する可能性が高まります。

正しいスクワット

以上がスクワットの動きの中で初心者が一番理解しないといけないポイントです。

足幅や目線等、細かいフォームに気を配ることも大事ですが、動きの基本を理解することが一番大事です。

まとめ


初心者はスクワットにおいてまず、バーが足の裏の垂直線上を上下して余計なモーメントが発生しないようにすることを意識する必要があります。まずは軽い重量で行い正しいフォームを身につけようと言いながら、これを体で覚えなければ、足幅等見た目だけの“正しいスクワットのフォーム”なるものを覚えても、重量を増やしたときに必ず怪我します。

高重量を扱っている時にバランスを崩して、力がバランスを取ることに向かえば当然、一気に強い負荷が腰や膝にかかりますから怪我する可能性が高まります。

バーベルには重力のみがかかっており、その力は垂直方向に下を向く力であって、バーを水平方向に動かす力は一切かかっていません。つまり、バーが水平方向に動いたとしたらそれは、水平方向に動かす余計な力を自分がかけているのであって、その力はスクワットには一切不必要なものです。

スクワットは、バーを背中に担いでしゃがんだり立ち上がったりする運動ではありません。脚、背中、臀部の筋肉を使って、重力が垂直方向に地面に押し付けようとするバーベルを上に持ち上げる運動です。体がその動きに集中できるフォームを習得しましょう。

終わりに


今回の説明は、参考に示したRippetoeの著作に準拠していますが、ほんの一部をかなり要約していますので、興味を持った人は原著を買うことをお薦めします。原著は、スクワット、デッドリフト、ミリタリープレス、ベンチプレス、クリーンの5種目だけで300ページ以上説明しているすごい本です。

確かに英語ですが、専門書なので、専門用語さえ辞書で引けば理解可能ですし、何より絵と写真が豊富でそれだけでも言いたいことが分かります。この本だけは、何で日本語に訳されていないのか本当に理解できない本です。Rippetoeはアンチファンクショナルトレーニングの代表格なので、日本では嫌われているのかもしれませんが。

Rippetoeはバランスボールの上でダンベルを持ち上げても、体を強くするためには重量が軽すぎるし、実際のスポーツの動きとはかけ離れているからスポーツパフォーマンスの向上にも貢献せず、結局バランスボールの上でダンベルを持ち上げる能力が高まるだけで何の役にも立たないという意見の持ち主です。アスリートに必要なのはキャリアを通じてスクワット、デッドリフト、ミリタリープレスのみという硬派な主張をしています。

いずれにせよ、この本には論理的で面白い説明が詰まっていますから、今後とも著作権の侵害にならない程度に紹介していきたいと思います。

参考


Mark Rippetoe Starting Strength Basic Barbell Training 3rd Edition

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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