はじめに
今回は、筋トレ初心者にとって、導入期の週3全身トレの次は、2分割で週2回(合計週4回)のトレーニングに移行するのが自然な流れなのではないかという疑問を考えてみたいと思います。
当ブログでは、すでに週3全身トレの次のお勧めメニューとして、2分割と3分割のメニューを紹介しています(以下、ドリアン・イエーツの2分割とFLEXマガジンの3分割と呼びます)。
しかし、一部位につきトレーニングする頻度が、ドリアン・イエーツの2分割では1.4回、FLEXマガジンの3分割では1.3回と、週3回から半分以下になっており、頻度を下げ過ぎではないのかと思う人もいるかと思います。週3の次は、週2が自然ではないかと。
そこで、全身を2分割して各部位を週2回トレーニングする2分割週4トレメニューの有効性について検討してみたいと思います。
メニュー組成の最重要ポイント
筋肉を成長させる上で一番重要なことは、強度の高いトレーニングで筋肉をしっかりと追い込みその後に十分な栄養と休養を与えることです。
したがって、メニューを考えるにあたって重要なことは、各部位を十分な強度でトレーニングでき、かつ、十分な休養を取ることが出来るスケジュールを実現することです。
その点、ドリアン・イエーツの2分割やFLEXマガジンの3分割メニューでは、大筋群であれば1部位につき3種目行うのを原則としています。初心者であっても、筋トレを1か月程度継続して、ある程度慣れてきたのであれば3種目やるべきという考えからです。
各部位をきっちりトレーニングすることが最初にあって、そのトレーニングメニューを受けて十分に休養できるようにトレーニングサイクルを組んでいる点は共通です(たまにわな部分ははありますが)。
ここで、週3全身トレでは1部位1種目だったのだから次のステップは1部位2種目ではないのかという疑問には少し注意すべき点があります。
週3全身トレの特徴
初心者に勧められる週3全身トレでは、すでに関連記事で説明したように、フォームの習得を最優先にしています。初心者は強度が相当弱くても筋肉を成長できるという事実に基づいて、頻度を増やすことを最優先にしています。
高頻度で繰り返して正しいフォームを習得するのが長期的に見たら最適だから週3全身トレを勧めているのであって、1部位1種目にして週3回という高頻度で鍛えるのが、初心者の筋肉の成長にとって最適だからではありません。
つまり、最優先事項はフォームの習得であり、その期間における筋肉成長の最大化ではありません。
したがって、週3全身トレを卒業するタイミングというのは自分で決めるのが正しいあり方です。筋トレに慣れて、なんとなくわかってきたと思ったときがやめる時です。
中一日では疲れが取れなくなってきたから分割法に移行するというのは、実際には一番多いでしょうが、週3全身トレの理念には合わない考え方です。あくまで、自分で基礎ができたと納得するまでは週3全身トレを続けるのが筋です。重量を軽くしてでも回数を重ねるのが整合的です。
その反面、週3全身トレを卒業したら、原則通りのしっかり追い込んで十分に休むというサイクルに移行するのが正しく、1部位1種目週3回(1×3)の次は、1部位2種目週2回(2×2)という数字の連続性にこだわる必要はありません。
もっとも、必然性がないだけであり、だからと言って、1部位2種目が悪いわけではありません。そこが問題です。
強度、頻度、休養
頻度と強度というのは非常に難しい問題です。
万人に共通する法則はなく、高強度で週1回が良いのか、ある程度強度を下げても週2回やったほうが良いのかというのは、人によっても部位によっても違う話です。
したがって、ドリアン・イエーツの2分割やFLEXマガジンの3分割のように、1部位3種目で週1.5回位トレーニングするのがベストであると理論的に説明することはできません。人次第です。
もっとも人によって違うと言っても、人に着目したときに、“しっかり鍛えてしっかり休む”ために必要なトレーニング量と休養期間は筋肉量に依存することを理解する必要があります。
上級者が週1回位でメニューを組んだ入りするのは筋肉量が多いからです。つまり、筋肉量が増えると、休養期間は長く必要になります。
筋肉量が2倍になった場合、追い込むのは重量を2倍に増やせばよいですが(実際には種目の工夫も必要ですが)、回復させるべき筋肉細胞の量が2倍に増えているにもかかわらず、回復能力は2倍になったりはしないので、上級者になればなるほど休養期間は増えることになります。
したがって、筋肉量の少ない初心者の場合、追い込むのにそこまで強度が必要ない代わりに回復にそれほど時間がかからないはずですから、理屈的には2種目くらいで週2で鍛えるサイクルを試す合理性はあります。
どちらが良いのかという一般論はできませんが、それが分からないこそ、主3全身トレの後に週2を試してみるというのは理屈上は合理性があります。初心者であればあるほど、高強度週1.5より中強度週2の方が効果的である可能性が高いからです。
こう考えると、理屈上、筋トレ初心者が週3全身トレの後に2分割週4トレを試す理由はあることになります。
もっとも、それを実践しようとすると新たな問題が出てきます。以下、具体的に2分割メニューを考えてみます。
2分割メニュー検討
2分割の方法にはいくつかありますが、大きく分けて3パターンだと思うので、一つ一つ見ていきます。なお、腹筋については毎回やる人もいれば、どこかに寄せる人もいて、いろいろあるので省略します。好きな日にやればよいと思います。
パターン1
二分割と聞いて最初に出てくるのはおそらく、上半身と下半身で分けるメニューでしょうか。しかし、これはバランスが悪くてあまり採用されないメニューです。
A:胸、肩、背中、上腕二頭筋、上腕三頭筋
B:大腿、カーフ
見れば明らかですが、明らかにABのバランスが悪くなります。バランスが悪いだけなら問題はありませんが、Aメニューで各部位2種目こなすのは、最低でも10種目となり1回で集中力をもってこなすのはかなり厳しくなります。
かといって、腕を1種目にするのは分割法にする意味に疑問を感じます。腕に関しては週3全身トレと比較して頻度を下げただけになるからです。
もっとも、Aメニューで脚以外を一気にやってしまって、次の日に思う存分脚のトレーニングに集中して、燃え尽きたらとっととジムを後にするというのは、ある意味メリハリがあります。また、10種目くらいは60分あればなんとかなるとも言えます。
パターン2
そこで、腕をBに回すという分割法が一般的です。そして、これはすでに紹介済みのドリアン・イエーツの2分割です。
A:胸、肩、背中、
B:大腿、カーフ、上腕二頭筋、上腕三頭筋
この2分割にするとABのバランスは良くなるのですが、この方法で週4回しようとすると、Bの後、中一日でAメニューをするのが厳しいという問題があります。ABオフの後のAはきついと思います。もちろん不可能ではありませんが、中二日開けて、ある程度は疲れの抜けた腕で上半身種目をガッツリと行いたいものです。
もっとも、大筋群を2種目で腕等は1種目という2分割で週4回するのは考えられると思います。しかし、パターン1と同様に腕を1種目にすると、腕については週3全身トレと比較して強度を変えずに頻度だけ下げたことになります。
パターン3
2分割の最後のパターンは押すと引くで分ける分割法です。
A:胸、肩、上腕三頭筋
B:脚、背中、上腕二頭筋
この方法の最大の問題点はBメニューのきつさです。脚の後に背中をやる元気がどれだけ残っているかという点です。
しかし、週3全身トレから、各部位2種目に増やして週4回トレーニングするのであればベストな分割法だと思います。パターン2のようにABから中一日はさんでAメニューをするのにそこまで干渉がなく、パターン1のようなAB間でのアンバランスもないからです(ここは好みもありますが)。
メニュー選択の分水嶺
以上みてきたように2分割で週4回する場合には、どのパターンでも一長一短あります。
また、各部位2種目というのはあまりセンスの良い方針ではありません。なぜかというと、筋肉をしっかり追い込むという観点から考えた場合に、大筋群と小筋群で種目数を同じにするのは不自然だからです。
かといって、大筋群2種目と小筋群1種目で週2回では、小筋群については週3全身トレより頻度を落としただけになります。他方、大筋群3種目で小筋群2種目にすると、おそらく各部位週2回は無理だと思います(きつすぎる)。
ここに2分割週4トレを採用するか否かの分水嶺があると思います。
つまり、①アンバランスさを捨てて各部位2種目を貫く、②大筋群を2種目に増やす見返りとして小筋群1種目を受け入れる、③週2の頻度にこだわるのをやめて大筋群3種目小筋群2種目を優先する、の3つの選択肢があります。
結論から言うと、①や②を受け入れるくらいなら③の方が合理的だから、ドリアン・イエーツやFLEXマガジンは2分割週4トレのメニューを採用していないともいえます。
つまり、筋肉の大きさにかかわらず2種目を貫く合理性はないですし、また、小筋群1種目週2回というのは週3全身トレに比べて後退でしかありません。
さらに、大筋群は絶対に3種目必要だと考えていると思います。
メニュー解説以外のところを読むと、胸のトレーニングで、ベンチプレス、インクラインプレス、フライ、肩のトレーニングでショルダープレス、サイドレイズ、リアレイズ、背中のトレーニングで、デッドリフト、ベントオーバー、チンニングの3つの組み合わせはどれ一つとして外せないと考えている気がします。
これは一理も二理もあると思います。超が付く重要種目を削ってまで頻度を週2にする理由があるのかと聞かれると、自信をもって頻度の方が重要だと答えられる人はいないでしょう。
もちろん、人次第であり、シュワルツネッガーやロニー・コールマンのように、3分割で6オン1オフにして、種目数も頻度も両取りする人たちもいるくらいです。
ちなみに、2007年に発表された論文で、6週間9種目を10RMでトレーニングして、週3で毎回2セットのグループと週2で毎回3セットのグループで比較したところ(週間トータルセット数が同じ)、ベンチプレスとスクワットで1RMの成長に大きな違いがみられなかったという論文があります。この論文は頻度やセット数ではなくトータルボリュームが大事と結論付けています(ちなみに筋肥大ではなく筋力の話をしている点には要注意)。
そう考えると、頻度を最優先に持ってくるよりも、やるべきトレーニングが先にあって、その後しっかり休むという原則に戻る気がします。
上記の2分割トレーニングの問題点はすべて、2分割週4サイクル先にありきの議論ゆえに顕出する問題点です。
スケジュール調整の柔軟性
もっとも、2分割週4トレにはある利点があります。
それは、忙しい社会人にとっては欠かせない柔軟性を有する点です。
基本的に分割法の議論は、スケジュールをしっかりこなせる前提でなされています。
例えばFLEXマガジンの3分割などは、週4しかも月火木金とスケジュール通りにトレーニングできることが前提であり、スキップしても週3が限度でしょう。いくらなんでも、3分割して週2といった、どこかの部位で週1以下に頻度を下げるのは良いことではありません(もちろん、たまにはあるでしょうし、継続している限り、全然気にする話ではありません)。
また、ドリアン・イエーツの2分割もAオフBオフオフという土日も関係なしの5日サイクルを回せることが前提となっています。
この点、上記の2分割パターン3の場合、週2から週4まで幅広く対応できますし、Aオフの後にBAと続けることもできます。これがパターン2だとできません(ABはできてもBAができない)。また、パターン3のAメニューはダンベルとインクラインベンチさえあれば自宅で行うことも可能です。
つまり、仕事の都合等の不規則な生活に一番合わせやすいと言えます。
そういう意味では上記2分割パターン3はかなり柔軟に運用可能なメニューであり、継続こそが最優先と考えた場合に(実際その通りですが)、一番有効なメニューかもしれません。
まとめ
週3全身トレの目的は頻度を増やして正しいフォームの習得を最優先することである。したがって、筋肉成長を目的として次のステップを考えた場合、週2回の頻度が理論的なネクストステップになるわけではない。
週2回の頻度ありきでメニューを組み、それを実現するために、大筋群の超基本種目3種目のうちいずれかを外したり、全部位2種目で統一したりするのは合理的でない可能性が高い。
もっとも、2分割週4トレのメニューは忙しい社会人にとっては柔軟にスケジュール調整できるという利点がある。
終わりに
週3全身トレの次は2分割で週2(合計週4)が自然な流れなのではないかという素朴な疑問を前提に2分割メニューについてあれこれ考えてみました。
週4トレーニングを狙った2分割メニューは、帯に短したすきに長しといったところがある反面、その中途半端さゆえに融通の利くメニュー構成にすることが出来ます。
社会人にとっては、週3でジムに行くのも結構きつかったりしますし、ジムに行くという理由で飲み会を断るほど入れ込む気持ちもないのが通常でしょうから、融通の利くメニューが最優先かと思います。
そうすると、2分割は有効だったりします。
それにしても、ドリアン・イエーツの2分割メニューとFLEXマガジンの3分割メニューは考え抜かれていると思います(30代以上にはかなりハードですが)。考えれば考えるほどよくできていると思います。やはり、トップの人たちの意見は違います。
参考
Steven J. Fleck, William J. Kraemer. Designing Resistance Training Programs 4th Edition