今回のテーマ
今回は筋トレしている人のタンパク質必要量について解説します。
ダイエットしている人については下記関連記事で書いたので、今回は体を大きくしたい人がたんぱく質をどれくらい摂取しなければいけないかを説明しています。
なお、必要量を計算して、それが食事で十分に摂取できない時に初めてプロテインが登場します。プロテインとは何かについては下記関連記事で詳しく解説していますので参照ください。
タンパク質摂取の副作用
筋トレしている人にはタンパク質が必要というのは知っていても、タンパク質を取り過ぎると腎臓に悪いという話はいたるところでされていますから、心配な人も多いと思います。
そういう人は下記記事を参照してください。
http://www.mainichi-daizu.com/room3/vol12/
結論としては、腎機能障害を起こしている人にとって高タンパク質食は有害だが、腎機能が正常な人に関して、タンパク質の取り過ぎが良くないという科学的証拠はないということなので、科学的には心配無用ということです。
タンパク質必要量の決定
初めに
タンパク質の必要量に関しては、筋トレしている人は通常の代謝に加えて筋肉が成長するのだから体重の2倍(g/kg)程度必要という説が通説といえます。
しかし、そんなに急激に体は成長しないのだから、3食しっかり食事した場合の目安である体重の1倍(g/kg)で十分と言う少数説と、実際はその中間くらいの1.5倍(g/kg)くらいではないかという、ちょっとざっくりしすぎの有力説があります。
ここで“私はこう思う”という意見を述べてもしょうがないので、有名な本からいくつか紹介します。
著名人の意見
名著『ドリアン・イエーツのすべて』の中でドリアン・イエーツは、筋肉をつけて体を大きくしたいなら、体重の2.8倍(g/kg)は取る必要があると言っています。
ジェイ・カトラーのコーチとして有名なクリス・アセートはChampionship Bodybuildingの中で除脂肪体重の2.3倍から3.4倍が必要と言っています。ここで、クリス・アセートの特徴はベースに除脂肪体重をもってきているところでしょう。
確かに、体重が同じでも体脂肪率次第で筋肉量が違うはずなので、筋肉の材料たるタンパク質の計算にあっては除脂肪体重をベースにするのが正確だと思います。
しかし、Xfitのタンパク質摂取量に関する記事が言うように、あくまで目安なのだからそこまで厳密に考える必要は乏しいのと、目標体重をもとに計算すれば十分な気がします。
肉体改造のカリスマであるマイケル・マシューズは、そのベストセラー BIGGER LEANER STRONGERのバルクアップ食に関する解説の中で、タンパク質の必要量として体重の2.3倍と言っています。
不朽の名著 The New Encyclopedia of Modern Bodybuildingのなかでアーノルド・シュワルツネッガーは、最低でも体重の2.3倍はとったほうが良いと言っています。
Joe Weiderの古典的名著であるULTIMATE BODYBUILDINGの中では、動物性タンパク質をしっかり食べようという記述しか見当たりませんでした。
ジム・ストッパーニはその著作 ”Jim Stoppani’s Encyclopedia of Muscle & Strength”の中で、3本の論文を引きながら体重の2.3倍から3.4倍(g/kg)のタンパク質が必要と結論付けています。
なお、ジム・ストッパーニは、一部の専門家たちが、”ハードにウェイトトレーニングをしている人でも通常のタンパク質摂取量で足りる”、”タンパク質摂取量を増やしてもあまり効果がない”、と主張している根拠となっている実験が、なぜたんぱく質摂取増加の影響がないという結果を示したのかについて、2012年に出たレビュー論文(一定分野の様々な論文をまとめた解説論文)で明らかになったことを解説しています。
その2012年のレビューによると、タンパク質摂取量を増やしても特に変化が見られなかった論文の多くは、1.そもそも対象者の普段の摂取量に対して十分に増やしていない、2.対象グループのたんぱく質摂取量が、比較対象の少量摂取グループに比べて十分に増やされていないという特徴があるそうです。
そして、通常摂取量の約2倍に増やした論文と、比較対象の少量摂取グループより最低でも50%以上摂取量を増やした論文に限定すれば、タンパク質摂取量を増やしたグループでは顕著な筋肉量の増加がみられると説明しているそうです。
それを受けて、体重の2.3倍から3.4倍(g/kg)が必要と結論付けています。
まとめ
これらを総合すると、結局最低でも目標体重の2倍は摂取した方が良いと思います。
なお、摂取方法については下記関連記事参照してください。いくら一日の必要量を摂取したとしてもそれを朝食で全部摂取してはいけません。こまめに補給し続けることが重要です。脂肪燃焼について書いた記事ですが、筋肉増量に関しても全く同じことが言えます。
タンパク質摂取量とカロリーの関係
クリスアセートの指摘
クリス・アセートは上記著書の中で、タンパク質摂取量の決定に影響を与える3要素について説明しています。
1.体重
2.トレーニング強度
3.トータルカロリー摂取量
体重の何倍という議論はすでにしました。また、トレーニング強度は特に説明不要だと思います。トレーニング強度が高い人ほど多くのタンパク質が必要というのは当然の気がします。
もっとも、クリス・アセートは、タンパク質を多く摂取するべきと結論付けている論文でさえ、実験の参加者はウェイトトレーニング初心者の大学生たちだから、ある程度やっているウェイトトレーニーはそこを考慮する必要があると述べています。
つまり、自分なんてまだまだ初心者だから控えめにしようというのはやめたほうがよさそうです。
そして、一番重要なのはトータルカロリー量でしょう。
クリス・アセートは、もし十分なカロリー量を取っていないのであれば、いくらタンパク質を摂取しても無駄だと太字で強調しています。なぜかというと、エネルギーが足りなければ、タンパク質は肝臓に送られてエネルギーに変えられるのであって、筋肉にはならないからです。
しっかり炭水化物と良質な脂肪を摂取して十分なカロリーを取っていることが、たんぱく質が筋肉になる前提だと述べています。
他の著名人の意見
ドリアン・イエーツは、タンパク質は体重の2.8倍必要とも言っていますが、体を大きくするためには基本的にトータルカロリーを決定することが最重要と言っています。そして、トータルカロリーを、炭水化物55%、タンパク質30%、脂肪15%の割合でとるのが良いと説明しています(上級者は脂肪の割合をもっと下げるべきとも言っています)。
リッチ・ギャスパリはその著書 51days No Excusesの中で、トータルカロリーを炭水化物45%、タンパク質40%、脂肪15%の割合で取るようにしようと言っています。
シュアワルツネッガーも上著の中で、筋肉をつけることも重要だが、低い体脂肪率を維持することも重要なのだから、タンパク質量を2.3倍以上にするのであれば、太ることのないようにカロリーを気にする必要があると、カロリーに対する配慮を見せています。
考えてみると当然のことかもしれません。タンパク質にだけ注目した、体重の何倍という情報も確かに有用ですが、3大栄養素のバランスを崩すのも良くないでしょう。
特に痩せ形60kgのハードゲイナーで1日3500kcal取っているけど、タンパク質量は120g(480kcal)であれば明らかバランスがおかしいです(少なすぎる)。
まとめ
以上から考えると、必要たんぱく質量を体重の何倍という基準に従って計算した後に、トータルカロリーに対する割合・バランスという点から見直す必要があると言えるでしょう。
また、体重の増加が止まっているとかであれば、見直すのはたんぱく質量ではなくカロリー量なのかもしれません。
結論
筋トレをするのであればタンパク質量は体重の少なくとも2.3倍(g/kg)くらいは摂取する必要があります。しかし、いくらタンパク質を取っても、トータルカロリー量が十分でなければ筋肉は成長しません。
また、トータルカロリーの30%から40%をたんぱく質から取るという視点も重要で、タンパク質を中心としながらも3大栄養素のバランスのとれた食事を心がける必要がある。
参考
今回はいろいろ参考にしましたが、以下がそのリストです。
ドリアン・イエーツ『ドリアン・イエーツのすべて』
Chris Aceto. Chapionship Bodybuilding
Michael Matthews. BIGGER LEANER STRONGER
Arnold Schwarzenegger. The New Encyclopedia of Modern Bodybuilding
Jim Stoppani. Jim Stoppani’s Encyclopedia of Muscle & Strength
Rich Gaspari. 51DAYS NO EXCUSES
なお、体重の2.3倍とか3.4倍とか半端な数字を書きましたが、それは洋書が必要量を体重1ポンド当たりで説明しているからです。正確には体重1ポンド当たり1gとか1.5gというのを私で換算しました。
この中で、『ドリアン・イエーツのすべて』は筋トレする人は絶対に持っていた方が良いと思います。特に初心者は絶対に持っていた方が良いです。これがあれば、筋トレオタクになりたい人以外、ほかの本を買う必要もなければネットで調べる必要もなくなると思います。大事なことが全部書いてあります。いずれ解説しますが、特に初心者用メニューには筋トレ初心者が理解しなくてはいけない大事なことが詰まっています。