有酸素運動を行うベストタイミングはいつなのか


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はじめに


今回は、有酸素運動を行うタイミングについて考えてみます。

筋トレしている人にとって、有酸素運動はいつ行うのが最適かという議論はメジャーなものですし、研究もたくさんなされています。

しかし、議論全体が木を見て森を見ずになっている感もあります。

行う以上、少しでも効率的な方法を求める姿勢は重要ですが、有酸素運動をすることが大事なのであって、実施するタイミングの全体的な結果への影響はそれほど大きいものではないことも頭の片隅に入れておく必要があります。

その点を踏まえて解説したいと思います。

有酸素運動の注意点


まず、実施すべき有酸素運動の強度については下記関連記事を参考ください。

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有酸素運動は筋肉を分解するというのは嘘か本当か

体を大きくしたい人であれ、ダイエットで締まったスリムな体を目指す人であれ、最優先のトレーニングは筋トレですが、有酸素運動のやりすぎは筋トレの効果を減少させるという点は理解する必要があります。以下でも、20分から30分程度の適度な有酸素運動を前提とします。

筋トレも有酸素運動も適度にする必要があり、やればやるだけ効果があると考えるのは大間違いです。

タイミングは2番目


有酸素運動を行う理由は人それぞれです。

脂肪燃焼が主目的の人であれば消費カロリーを増やすことでしょうし、体を大きくしたい人にとっては、脂肪燃焼もありますが、心肺機能を強化し、体のコンディションを整えることも重要だと思います。

基本的にいつ有酸素運動をしようがその目的は達成されます。

これから、有酸素運動はいつ行うのが”より”効果的かという話をするのですが、タイミング次第で、やらなかった方が良かったなんて結論に達することはありません。やり過ぎない限り、いつやっても効果があります。

したがって、モチベーションが高いタイミングで行うのが一番です。

継続するのが一番であり、朝早起きして走るのも良いですが、つらくなってやめてしまうくらいであれば、筋トレ前に有酸素運動をする習慣を継続する方が遥かにましです。

筋トレ前に有酸素運動を行う方が、筋トレ後にやるよりダイエットに効果的と信じているのであれば、間違っていますが、だからと言って、それをやることによって筋トレが無意味なるとか、有酸素運動の意味がないということではありません。

走るのが大好きで、ある程度走って体が温まってから筋トレするのが好きなのであればそれで全然かまいません(筋トレする体力を使い切らない限り)。

いつやった方が効率的かという議論は間違いなく2番目の議論であり、自分がモチベーション的に充実している時に行う習慣を身につけ、充実したトレーニングを継続することが何より重要です。

そうはいっても、何時行うのが一番効果的なのかという疑問は誰もが持ちますから、以下で代表的な議論を見ていきます。

空腹時の有酸素運動


「脂肪燃焼目的であれば有酸素運動は空腹時に行うのが効率的」という意見の真偽は分かっていません。あれこれ研究があったりしますので、そのうちの一つか二つ論文を恣意的に引っ張って来て、最新の研究の結果ではこうですと言うことはできますが、実際のところはもう少し研究の蓄積を待つ必要があると思います。

しかし、脂肪燃焼目的の有酸素運動は空腹時に行うべきかという質問の答えは既に出ています。そうしたければそうすればよいというものです。これは一体、どういうことでしょうか。

空腹時の方が体の貯蔵グリコーゲンは少ないから、予備エネルギーである脂肪が燃えやすいというのは理論上当然です。しかし、食後と比較して特に脂肪が燃えやすいわけではないという研究結果もあります(空腹の分だけ馬力が出ないだけで、脂肪を余分に燃やして空腹でない時と同じエネルギーが出せるわけではないという当然の結論)。

それに加えて、空腹時に有酸素運動を行うと筋肉の分解量が2倍以上増えるという研究結果もあります。

しかし、ボディビルダーで朝起きてすぐに有酸素運動をして、体脂肪率の低い体を保っている人が多いのも事実です。ドリアン・イエーツはその著書の中で、起床後朝食前に有酸素運動を行うのが脂肪燃焼にとって非常に効果的と断言しています。同じように早朝走る人たちに格闘家がいます。

もっとも、ボディビルダーや格闘家も、朝走るのが気持ちいいし、アスリートとしての一日のスタートのルールとして、朝走っているだけかもしれません。しかし、このような、実践して結果を出しているトップアスリート達が多くいる以上、上記のような研究結果は、ある程度の蓄積がない限り説得力を持ちません。特に、体脂肪率が高い人と低い人で結果は異なる可能性は大いにあります。

また、空腹状態で集中して運動するのは困難であり、それは運動の強度が高くなるほど顕著になります。その一方で、食べてすぐ後の運動は不快です。こういった事実も考慮する必要があります。

このようにたくさんの情報があり、空腹時の運動が効果的か否かはよくわかっていないのが現状です。

しかし、ある事実を思い出す必要があります。それは、ボディビルダーのように体を大きくしたい人やダイエット目的の人の場合には、有酸素運動の量を適度に保つ必要があり、それほど強度は高くないという事実です。

つまり、強度の高くない有酸素運動は、空腹時に行うことも可能ですし、また、筋肉量の減少もそれほど多いわけではありません。強度自体が少ないので、いつ実施するかというタイミングの影響も比較的小さいわけです。

したがって、空腹時(特に起床後)に行うのが好きな人は、それでかまいませんが、有酸素運動を継続的に行うことの効果に比べれば、空腹時に行うかどうかというのは全体的な結果に影響する話ではなさそうです。

結論として、有酸素運動は空腹時にすべきかという質問の答えは、厳密なところは良く分かっていないが、全体的な結果に影響を及ぼすような問題ではないということになります(答えになっていませんが)。

別のセッションですべきか


筋トレと有酸素運動のどちらを先にするかではなく、別々のセッションでするのと一つのセッションでするのと、どちらが効果的かという話です。

これはなんとなくわかると思いますが、筋トレと有酸素運動を同時にやると相互に干渉します。

両方ともフレッシュな状態で行う方が、エネルギーレベルとモチベーションレベルの両方を高く保って、密度の高いトレーニングが行えますから、最低でも数時間開けて(休養と食事をとって)、別々に実施する方が間違いなく効果的です。

具体的には、有酸素運動の直後に筋トレをすると、フレッシュな状態で有酸素運動をできる反面、筋トレ後のIGF-1などの成長系ホルモンの分泌が抑制されることが分かっています。他方、筋トレ直後に有酸素運動をすると、筋トレでグリコーゲンが枯渇していますから、脂肪が燃える反面、運動中の筋肉の分解は加速します。

このように、筋トレと有酸素運動の両方を一つのセッションで行うと、相互の成果を阻害する運命にあります。もっとも、これらの相互干渉は、一つのセッションで行うからというよりは、元々2つの運動の間に存在する相互干渉が、時間を空けずに行うことで大きくなるというものです。


しかし、連続することでどちらかが無意味になるといった劇的な結果を生じるわけではありません。

そして、多くの社会人にとって、1日2回運動するのはかなりハードルが高いですから、会社帰りにジムに行って両方やらざるを得ません。そこで、同じセッションで行う場合にはどちらを先にするのが良いのかという議論が登場します。

筋トレ後か筋トレ前か


では、ジムに行って一つのセッションで有酸素運動と筋トレを両方やる場合にはどちらを先にするのが良いのでしょうか。

結論は簡単で、優先する方をやるべきです。

よく、“筋トレ後に有酸素運動をするのが良い”と言われますが、その意見は常に当てはまるわけではありません。

体を大きくしたい人や、ダイエットをしている人にとって、有酸素運動より筋トレの方が優先度が高く、有酸素運動の筋トレへの干渉を最小限にしたいからこそ、先に筋トレをすべきとなるだけです。

持久系アスリートであれば、当然有酸素運動を先にすべきです。メインの持久系トレーニングをフレッシュな状態で、密度高く行うべきだからです。

アレックス・ハッチンソン著の「良いトレーニング、無駄なトレーニング」によると、自分にとって重要な方から先にトレーニングするというアプローチはエリートアスリートの間でも採用され始めているそうです。

これまでは、有酸素運動を先にやると疲れてバーベルが持てなくなるから結果として筋肉が付きにくくなるといった感覚的だったものが、科学的な裏付けが取れ始めています。

持久力も筋肥大も、細胞内で起こる変化においては同じAMPキナーゼという酵素の働きが重要なのですが、この酵素はどちらか一方しかスイッチをオンにできず、最初に運動した方のスイッチが入ることや、瞬時にスイッチをの切り替えができないことが分かってきとのことです。

以上から、筋トレと有酸素運動を一つのセッションで行う場合には、自分にとって優先順位の高いものを最初にすべきというのが答えです。

その結果として、体作りやダイエットなら、筋トレ後に有酸素運動をするのが良いという結論になります。

まとめ


有酸素運動をいつやるのが最適かというのは検討に値しますが、自分のモチベーションが高いタイミングで充実したトレーニングを行い、かつ、継続するのが一番重要であって、タイミングの議論は2番目の議論であるという点を理解する必要があります。

空腹時にやるのが良いかどうかは、行おうとしている有酸素運動の強度によります。高い強度の有酸素運動であれば、食後の栄養が十分にある状態で行うべきです。比較的軽い強度であれば、空腹時に行っても問題ありませんが、他方で、軽い運動であれば空腹時に行うかどうかの影響は全体的に見れば微々たるものと考えられます。

筋トレと有酸素運動は別々のセッションにして、両方ともフレッシュな状態で行うのがベストであることは間違いありません。

筋トレと有酸素運動を同じセッションで行う場合には、自分にとって優先度の高い方から先にするのが合理的で、科学的な裏付けも取れつつあります。

終わりに


今回は、有酸素運動をするタイミングについて解説しました。

プロテインを飲むタイミングの議論に似ていて、森ではなく木がやたらとクローズアップされている典型的な議論だと思います。

もちろん、やる以上は少しでも効率的な方法を模索するのは正しいアプローチです。しかし、どっちが良いのかという相対的な思考が、いつのまにか絶対的な思考を排除してしまう場合があることにも注意が必要です。

いつやるのが効率的かという議論は、自分にとってモチベーションを持って充実したトレーニングを行えるのはいつなのかという議論に比べたら、重要性は遥かに低いです。

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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参考


アレックス・ハッチンソン著 児島修訳 『良いトレーニング、無駄なトレーニング』

Michael Matthews Bigger Leaner Stronger

Michael Matthews Thinner Leaner Stronger

Tom Venuto Burn the fat feed the muscle


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