オーバーロードの原則と部位ごとのトータルセット数について


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はじめに


今回はオーバーロードの原則について説明します。

これは筋トレの原則の中でも、第一原則と呼んでもおかしくない原則です。基本中の基本です。

にもかかわらず、ブログを見直していたら、何故かこの原則を正面から説明した記事が見当たらなかったので、解説してみます。

また、この原則に絡めて、部位ごとのセット数をどうすればよいかという点についても言及してみたいと思います。

オーバーロードの原則及び部位ごとのトータルセット数の説明は、クリス・アセート(ジェイ・カトラーのコーチです)の説明が非常にわかりやすいと思ったので、基本的に下記の書籍に準拠して解説します。

オーバーロードの原則


この原則は筋トレの基本原則の中では間違いなく一番大事な原則なのですが、分かりやすく説明しようとすると難しいので裏側から説明します。

この原則を裏から言うと、毎回同じことをしていても、鏡に映る自分は毎回同じということです。

つまり、毎日、腕立て50回、スクワット50回などと決めた回数やったところで体は何も変わらないということです。

体が変わるということは、ある刺激を受けた時に、その刺激に適応しようとして体に変化が起きることを言います。今と違う姿になるのは、体が今のままではいけないと思うからです。

もちろん、スクワットを50回やればその分だけのエネルギーは失われますから、正確には、スクワットの前後でグリコーゲンの減少は起きますが、それを受けて筋肉が増えるといった変化は起きないということです。

体が、正確には脳が、筋肉を成長させるような指示を出すきっかけとなるには一定以上の負荷が必要です。

今まで持ったことのないような高重量を扱うと、筋肉に傷がつくのですが、これが修復されるときに、体は、次に同じような刺激が来た時に体が傷つかなくて済むように、従来よりも強い筋肉を合成します。

その結果、前回のトレーニングでは20kgが9回しか持ち上がらなかったの、次のトレーニングでは、10回持ち上がるようになります。

しかし、そのとき10回でやめてはダメで、頑張って11回目に挑戦しようとすると、また筋肉は傷つくことになります。そして、その次は11回持ち上がるようになるようになるので、次は12回に挑戦したり、もしくは、20kgから21kgにウェイトを上げたりします。

つまり、筋肉の成長というのは、経験したことのない刺激に対応する体の環境適応そのものですから、継続的に筋肉を成長させるには、毎回、オーバーロード、つまり、経験したことのない負荷を与える必要があるのです。

これをまとめる、毎回同じことをしていても、鏡に映る自分は毎回同じであり、毎回チャレンジするからこそ、日々体が変わり続けるということになります。

これがオーバーロードの原則です。

超回復との関係


実はオーバーロードの原則は超回復の話と裏表の関係にあります。

超回復の説明で出てくる絵を再掲します。
超回復とは
トレーニングで筋肉に傷をつけると、一時的に筋力は落ちますが、その後の48時間から72時間で(数字は一般論)、筋肉は従来以上に強くなるわけです。

もっとも、この裏側にはオーバーロードの原則があり、オーバーロード(前回を超える負荷とか自分の現在能力を超える負荷など)をかけなければ、超回復(次回に刺激を乗り越えられるようになろうとする適応)は起こりません。

どんな筋トレをしても超回復が起こるわけではなく、一定以上の負荷をかけて初めて超回復が起きるということです。

つまり、超回復を中心に筋トレの基本を説明すると、軽い負荷でトレーニングしても超回復は起きないので、超回復が起きるだけの負荷をかけましょうということになり、超回復の原則と呼ばれたりします。

結局のところ、筋トレ初心者向けの説明に登場するオーバーロードの原則と超回復の原則は本質的に同じものです。

もっとも、オーバーロードの原則はというのは、「継続的な筋肉の成長を引き出すためには継続的に前回以上の負荷をかけていきましょう」という、ウェイトトレーニングの原則を説明しようとしているのに対して、超回復というのは、トレーニング後に起きる現象そのものですから、“超回復の原則”という言い方は、個人的にはあまり筋の良い言い方だとは思いません。

適応論という究極の結果論


超回復にしろ、オーバーロードの原則にしろ、「人間の体は一定以上の負荷を受け損傷すると、次にその刺激が来た時には、それを乗り越えようと、適応プロセスが作動し、従来よりも強い体に成長する」と言われます。

つまり、筋肉の成長は環境適応行動であると言われるわけです。

しかし、この適応行動というロジックは厄介で、ある意味究極の結果論です。

一定以上の負荷を与えると筋肉が損傷し、それが回復すると従来よりも強い筋肉になる。事実としてはそれだけです。

ここで起きているのは、必然の物理法則に支配された化学反応のみであり、結果として従来よりも強い筋力が観察されるだけです。

「人間には刺激(環境)に適応し、乗り越えようとする仕組みがある」というのは、観察した科学者たちが、起きている現象にストーリー性を持たせるために勝手に作った話です。

従来よりも強い筋肉になったというだけであり、何か刺激を受けて、「よし、筋肉を強化して乗り越えろ」などと指令を出す人がいるわけではありません。

そう考えると、方法論としてのオーバーロードの原則より、結果論に過ぎない超回復の説明の方が“科学的”なのかもしれません。

話がそれたので、元に戻します。

オーバーロードの原則を実践するためにはどうすればよいのでしょうか。

初心者にとってのオーバーロード


オーバーロード、つまり、継続して未経験の負荷をかけ続けると言っても、それはセット数を増やすことでしょうか、それとも、重量を上げることでしょうか。

結論から言うと、初心者にとってはどちらもオーバーロードになります。

初心者はセット数を増やしても構いません。むしろ、どんどん重量を上げて、フォームを崩すくらいなら、レップ数やセット数(トータルレップ数)を増やして、動作の習得に時間をかけるべきです。セット数を増やすというのには、ある部位につき種目数を増やすというのも含みます。


しかし、セット数を増やせば増やすだけ良いのかというわけではありません。これは、筋トレする人はみんな聞いたことがあると思います。

では、種目ごとや部位ごとに何セットが良いのでしょうか。もしくは、何セット以上にはしないほうが良いのでしょうか。

これは、多くの初心者が疑問に思うところであると同時に、なかなかしっくりくる回答に出会えない疑問だと思います。

実際、部位ごとのセット数をどれくらいにすべきかという点について、理論的な説明というのはなかなかありません。

マイク・メンツァーができる限り少ない方が良いと言っているくらいでしょうか。しかし、初心者がメインセット1セットで追い込めるはずがありませんし、種目数も考えた時には、1部位で何セットが良いのかという疑問の回答にはなりません。

ここについての一般的な説明の中で具体的な数字を出しているのはクリス・アセートです。

クリス・アセートは、初級者から中級者は、部位ごとのトータルで、
上腕:6セット
肩:9セット
背中:9セット
胸:6から8セット
大腿(ハム含む):9セット
カーフ:6セット
としています(書きぶりから、ウォームアップセットとは別のメインセットの数字だと思います)。

これ以上増やすのは良くないときっぱり言っています。

何故かというと、扱う重量が下がるからだと説明しています。

つまり、初心者のうちにはセット数(種目数)を増やすこともオーバーロードになるのだが、その結果として扱う重量が下がるようになれば、もっと厳密に言うと後半の種目において適切な重量でトレーニングできなくなるのであれば、増やしても意味がないと言っているのです。

高重量こそすべて


別の記事でもか書きましたが、ムキムキの体の代表格のアスリートと言えば陸上短距離の選手です。

彼らの体がムキムキなのは、何も別に、全員ボディビルを趣味としてやっているわけではありません。全身の筋肉を何の躊躇もなく全力で収縮させる競技をしている結果としてあのような体になっているのです(もちろんハードな筋トレもしていると思いますが)。

彼らの練習時間は決して長くあはりません。延々と100m走を繰り返したりはしません。集中力を持って、100mという短い距離を走る間に全身の筋肉を全力で収縮させます。

これが、筋繊維の中の速筋2bという筋肥大のポテンシャルの高い筋肉の動員を促し、結果として筋肥大につながります。ペースを考えながら走る長距離ランナーではこうはいきません。

筋肥大のポテンシャルが高いのは速筋2bという種類の筋繊維であり、厄介なことに、速筋2bは一定上の負荷を持った時に速筋2a補佐する形で動員されます。

ベンチプレス100kgで10レップが限界の人が、70kgをもって20レップを限界までやったとしても速筋2bは稼働しません。

つまり、筋肥大したいのであれば、速筋2bを稼働させるようなトレーニングが必要になります。

力のセーブという最悪のミス


速筋2bというのは、全力を振り絞るときに初めて稼働される筋肉です。全力を振り絞ることこそが筋肥大のカギです。

したがって、力をセーブしながらのトレーニングというのは最悪です。そして、これを避けるために、部位ごとのトータルセット数を抑えるべきという意見があるのです。

良くある10回3セット法を例にとります。

ウォームアップを3セットとは別にやった場合、最初の1セットは全力を振り絞っていると言えるでしょうか。力をセーブしているとは言えないでしょうか。

もちろん、メインセット3セットが悪いといって要るわけではありません。しかし、もし、最初の1セットを残りの2セット目、3セット目を考えながらやって、なんとなくで10回やってラックに戻しているのであれば、、重量を上げてメインセット2セットで燃え尽きるようにした方が良いかもしれません。

もう一つの力のセーブは、レップスピードです。

世界陸上が最近ありましたが、ウサイン・ボルトのスピードを測定したとき、スタートから10m地点、20m地点、30m地点、40m地点のどこが一番早いでしょうか。

決まっていますが40m地点です。永久に加速し続けることはできませんが、序盤はぐんぐん加速するからです。

これからわかるように、物理の授業ではありませんが、力とは加速度ですから、力をかけ続ければ、力がかかった物体のスピードはどんどん上がっていきます。

したがって、動作中バーベルの挙上スピードも上がっていくのが自然です。

もし、フォームが大事と言って(超大事ですが)、一定のスピードを維持しながらウェイトを挙上しているのであれば、それは力をセーブしているのであって、自ら速筋2bの稼働を抑えていることにほかなりません。

もちろん、胸でバーベルをバウンドさせたりするのは良くありませんが、だからと言ってゆっくりするのが良いわけではありません。

自分が正しいフォームで扱える重量でトレーニングするのが前提ではありますが、1レップ入魂で、レップごとに全力を振り絞りのが重要です。

まとめ


体を変えていくためには、継続的にオーバーロードをかけていく必要があります。毎回同じ重量・回数では何も変わりません。

この場合のオーバーロードとは、超回復が起こるような負荷と言い換えても同じです。

初心者の場合、オーバーロードを実現するためには、重量を増やすことだけでなく、セット数を増やすこと(分割法にして部位ごとの種目数を増やすことを含む)でも実現できます。

しかし、筋トレの基本はあくまで、毎レップ全力を振り絞り速筋2bを刺激することにあります。セット数を増やした結果、予定したメニューをやりきるために、トレーニング中に力をセーブするようになっては本末転倒ですから、セット数の増加は一定程度に抑えるべきです。

終わりに


今回は、クリス・アセートの著作に準拠する形で、オーバーロードの原則を説明しつつも、トータルセット数に言及してみました。

もちろん、途中登場する具体的なセット数はクリス・アセートの意見であり、そこに真実の回答はありません。

昔、マッスルアンドフィットネスの読者からの質問のコーナーで、シュワルツネッガーだかロニー・コールマンだかが(もしかしたら違う人かも)、セット間の休憩は何分にすべきかという質問に対して、そんなのは自分の体に聞けと回答していました。

息が整って、さあやるぞと思ったらそこがベストタイミングで、自分はストップウォッチでインターバルを計ったことなど一度もないという、非常にカッコいいこと言っていました。

セット数もそれと同じで、真実の回答は、毎レップ、毎セット全力を尽くしながら、集中力を保ちながらも自分が燃え尽きるだけのトータルセット数が正しいということになるのでしょう。

プライベート空間でダイエット&ボディメイク
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